子どもが泣いたり、怒ったり、落ち込んだり──。
そうした「ネガティブな感情」に直面したとき、私たち大人はつい「泣かないで」「そんなことで怒らないの」などと、気持ちを抑え込もうとしてしまうことがあります。
しかし実は、ネガティブな感情ほど、共感し、受け入れることが子どもの健やかな心の発達に不可欠だと、心理学や発達支援の分野では繰り返し指摘されています。
この記事では、「ネガティブな感情を受容することの意味」と、「どう共感すればよいか」を、教育と発達心理の視点からわかりやすく解説します。
子どもの感情は“整理されていない宝石”のようなもの
子どもは、まだ感情をコントロールしたり、うまく言葉にしたりする力が発展途上にあります。
そのため、大人にとっては些細に見えることでも、大きな不安や悲しみになることがあります。
たとえば:
- 友だちにからかわれて大泣きする
- 給食が口に合わずパニックになる
- 宿題ができずに「もう学校に行きたくない」と言う
このような反応に対し、大人が「そんなのたいしたことじゃないよ」と受け流してしまうと、子どもは“気持ちを分かってもらえない”という孤独感を抱えてしまうのです。
ネガティブな感情を受け入れる3つの理由
1. 「わかってくれた」が自己肯定感の土台になる
子どもの感情に共感し、「そうだったんだね」「つらかったね」と気持ちを受け止めてもらえると、「自分の気持ちは価値がある」と感じることができます。
これはそのまま、
- 自分を信じる力(自己肯定感)
- 人と関わる安心感(基本的信頼感)
の土台になります。
2. 感情を言葉にする力が育つ
大人が「悲しかったね」「それは悔しい気持ちだったんだよね」と気持ちに名前をつけてあげることで、子どもは少しずつ、
- 自分の感情を理解する力
- その気持ちを言葉にする力
を身につけていきます。これは、のちの感情コントロール能力や人間関係スキルにつながっていきます。
3. 感情を抑えるより「流す」ことで癒される
感情は「抑える」より「流す」ことで整理されます。
泣くこと、怒りを吐き出すこと、不安を打ち明けること──これらを安全な場でできる経験は、子どもの情緒の安定につながります。
逆に、感情を押し殺す経験が積み重なると、「自分の気持ちはダメなんだ」と思い込み、内面の不安や怒りが蓄積されてしまう危険性もあります。
ネガティブな感情にどう共感すればいいのか?
「大丈夫」より「そうだったんだね」
つらい気持ちに対して、「大丈夫」「泣かないで」と声をかけるのは一見優しそうに思えますが、感情を否定してしまう表現にもなりかねません。
代わりに、
- 「悔しかったね」
- 「びっくりしたよね」
- 「怖かったんだね」
など、気持ちに名前をつけて共感する表現を使うと、子どもは「自分の気持ちが伝わった」と安心できます。
すぐにアドバイスをしない
子どもがネガティブな気持ちを話してきたとき、つい「じゃあこうしたら?」とアドバイスをしたくなりますが、まずは“聴く”ことが最優先です。
大人:「そんなことがあったんだね」
子ども:「うん…」
大人:「どう感じた?」
子ども:「すごく嫌だった…」
大人:「それはつらかったね」
このように、感情の整理を一緒に進めていく姿勢が大切です。
「その気持ちは当たり前」だと伝える
子どもは、自分のネガティブな感情に戸惑っていることもあります。
だからこそ、「そんなふうに感じるのは普通のことだよ」と伝えることで、感情を否定せず受け入れる視点を育てられます。
大人自身が感情に正直にいることが、子どもへの最高の教育
実は、子どもがネガティブな感情を受け入れられるようになるためには、大人自身が自分の感情と向き合うことも大切です。
- 大人も「今日はつかれたなぁ」と言ってよい
- 悲しいときに涙を見せてもいい
- 怒ったあとに「ちょっと言いすぎたね」と謝れるのも大切
大人が感情をオープンにすることで、子どもも「感情はあっていいものなんだ」と学んでいきます。
まとめ:ネガティブな感情こそ、子どもにとって“受け止められる”体験が必要
ネガティブな感情は、子どもにとっても大人にとっても、できれば避けたいものかもしれません。
しかし、悲しみや怒り、不安を「一緒に感じてくれる人」がいることで、子どもの心は癒され、強くなっていきます。
- ネガティブな感情を否定しない
- 共感の言葉をかける
- 感情に名前をつけてあげる
- 解決よりも“寄り添い”を優先する
こうした姿勢が、子どもとの信頼関係を築き、感情に振り回されない自己を育てる土台になります。
ネガティブな感情は、子どもが自分と向き合うための“入り口”です。
その瞬間こそ、子どもの心が成長するチャンスだと捉えて、あたたかく見守り、共に歩んでいきましょう。
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