子どもが「話せない」「伝えられない」「わかってもらえない」――
こうした困難の背景にあるのが、「語彙力(ボキャブラリー)」の不足です。語彙力とは、知っていて使える言葉の数と質のことを指します。
幼児期から学童期、そして思春期にかけて、語彙はその子の世界の広さを決める鍵となります。
この記事では、「語彙力はなぜ必要か?」というテーマを、教育・心理・発達の観点から解説し、家庭でできる語彙力サポートのヒントをお伝えします。
言葉が増えると“世界が広がる”
語彙力が高いということは、それだけ多くの「認識の引き出し」を持っているということです。
例えば、同じ空を見て「きれい」と言う子と、「薄曇りだけど、その下に淡い光が差してる。幻想的だね」と言える子では、感じ方の深さと表現の幅に大きな違いが生まれます。
つまり語彙力とは、ものごとをより繊細に感じ、理解し、表現するための“感性の翼”なのです。
語彙が増えると、以下のような変化が見られるようになります。
- 絵本や文章の理解が深まる
- 日常の感情を細やかに表現できる
- 他者の話をより正確に受け取れる
- 自己肯定感が育ちやすい
子どもの語彙は、「頭の良さ」というよりも、「思考と感情の橋渡し」です。
語彙力がなければ「考える力」も育たない
「語彙力は国語力の一部でしょ?」と思われがちですが、実は語彙は思考力・表現力・コミュニケーション力の土台です。
思考は「言葉で考える」もの。言葉が少ないと、考えも浅くなりがちです。
たとえば、
「どうして怒ったの?」と聞かれて
「ムカついたから」だけで済ませる子と、
「本当はさびしかったのに、無視されたと感じたから怒った」と言える子とでは、
問題解決の力も、対人関係もまったく違ってきます。
語彙は、思考を精緻化する道具であり、感情を調整する安全弁でもあるのです。
学力と語彙力の相関は非常に高い
近年の学力調査や脳科学の研究では、「語彙力の高さと学力の高さ」は明確な相関があることが示されています。
特に影響が大きいのは、
- 読解力
- 説明文・論理文の理解力
- 数学の文章題・図形の把握力
- 理科や社会の概念理解力
です。教科書に出てくる言葉を知らなければ、そもそも“問題の意味がわからない”という事態になります。
つまり語彙力は、すべての教科の土台。学年が上がるにつれて、その重要性はより増していきます。
語彙力は「人間関係力」でもある
言葉が豊かであれば、相手の気持ちに配慮したり、適切な距離感で関われたりします。
- 「それってちょっと失礼だったかも」
- 「もう少し柔らかい言い方にしよう」
- 「“ありがとう”って言葉が足りなかったかも」
といった対人感覚や社会性も、語彙力によって育まれるのです。
逆に、語彙が乏しいと、
- 自分の気持ちを言えない
- 相手の言葉を誤解しやすい
- トラブルが増える
などの問題も起こりやすくなります。
「わかってもらえない」「通じない」というストレスは、子どもの心に深く影響します。
語彙は、自分と他人をつなぐ信頼の橋でもあるのです。
語彙力が育つ環境とは?
語彙は“生まれつき”ではなく、“環境”と“関わり”によって育ちます。
特に語彙が伸びやすいのは、
- 会話が多い家庭
- 読み聞かせや本が身近にある生活
- 感情を言葉にする習慣がある環境
です。
語彙力は、「言葉のシャワー」を浴びることで少しずつ蓄積されていくものです。反対に、テレビやYouTubeの一方的な受け身の視聴ばかりでは、言葉は育ちません。
親ができる!語彙を育てる3つのヒント
1. 「言い換え」の遊びを取り入れる
たとえば、「すごい」の代わりに
- 「圧巻だったね」
- 「感動したね」
- 「緻密な工夫があったね」
など、場面に応じた言葉を一緒に探していくことで、語彙が具体化されます。
2. 感情の語彙を日常会話に入れる
「怒った」ではなく、
- 「悔しい」
- 「悲しい」
- 「残念」
- 「納得いかない」
など、感情の語彙を一緒に探し、表現してあげましょう。心の理解が深まり、語彙も増えます。
3. 読書と対話は“セット”で行う
本を読むだけではなく、読んだあとに
「どの場面が印象的だった?」
「主人公はどう感じたと思う?」
など、親子で会話することで、語彙は実際に使える言葉として身につきます。
まとめ:語彙は「その子の生きる力」になる
語彙力がある子どもは、
- 自分の気持ちを整理し
- 他人に適切に伝え
- 学校の学びを深め
- 人間関係をスムーズに築いていけます。
語彙とは、ただの知識ではありません。自分らしく生きていくための、心と頭のツールです。
「ことばがわかる」ことは、「世界がわかる」こと。
「ことばが話せる」ことは、「自分を生きる」こと。
今日、子どもとの会話の中で、ひとつでも“新しい言葉との出会い”を贈ってみてください。
それは、子どもが未来をひらく鍵になるはずです。
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