子どものトラブルや問題行動に直面したとき、保護者や指導者として最もよく口にする言葉の一つが「どうしてそんなことをしたの?」ではないでしょうか。
- お友達を叩いてしまった
- ルールを破ってしまった
- 嘘をついてしまった
このような行動があったとき、大人はつい「行為」だけに目を向けがちです。しかし、その行為の裏にある「意図(気持ちや理由)」に目を向けることが、子どもとの信頼関係を築き、問題解決の第一歩となります。
この記事では、「意図」と「行為」を切り分けて捉えることの重要性と、その具体的な関わり方についてお伝えします。
行為だけを叱ると、子どもは「気持ち」を閉じてしまう
例えば、ある子が「嫌い!」と言って友達を突き飛ばしてしまった場面。
このとき、大人が「友達を突き飛ばすなんてダメでしょ!」と行為だけを非難すると、子どもはこう感じることがあります。
- 「言っちゃいけないことを言ったんだな」
- 「でも、イライラしたのは本当なのに」
- 「どうせ怒られるだけだから、もう話したくない」
つまり、自分の「意図(なぜそうしたか)」は理解されないと感じ、感情を押し殺すことや、本音を隠す行動が習慣化していきます。
大人が「突き飛ばした行為はいけない」と伝えること自体は必要です。しかしその前に、「なぜそうしたのか」「どんな気持ちだったのか」を尋ねることが大切なのです。
「意図」と「行為」を分けて受け止めるとは?
「意図」と「行為」を切り分けるとは、次のような姿勢です。
- 行為は適切でなかったとしても、意図(気持ち)はまず理解しようとする
- 感情や理由は否定せず、行動の選び方について一緒に考える
たとえば先ほどの例なら、こういった関わり方が可能です。
「イライラしてたんだね。そう感じたのには、何かあったのかな?」
「突き飛ばすのはよくないけど、『やめて』って言いたかったんだよね」
「じゃあ、次はどう言えば伝わるかな?」
このように、気持ちを肯定し、行動の改善に向けて対話をすることで、子どもは「自分の気持ちは大切にされている」と感じ、次第に自制や伝え方を学んでいきます。
「意図をくみ取る力」が育つと、子どもの行動は変わる
大人が「意図と行為を分けて捉える」姿勢を日常的に示すと、子ども自身もそれを学び始めます。
- 相手の行動に腹を立てる前に、「どんな気持ちだったのかな?」と考えられる
- 自分の行動を振り返る際に、「なぜそうしたのか」を言葉にできる
- トラブルの場面でも、感情を整理し、落ち着いて話せる
これは、単なるマナーやしつけを超えて、社会性・共感力・自己調整力を高めるための基礎となる力です。
子どもが育っていく過程では、まだ語彙も表現も未熟です。だからこそ、「わかってもらえた」という実感が、安心感と学習意欲を生むのです。
すぐに叱らず、「観察・共感・対話」をセットにする
子どもに問題行動が見られたとき、大切なのは「反射的に叱る」のではなく、「少し間を取って状況を観察する」ことです。
以下のような流れで関わることをおすすめします。
- 観察:「今、何が起きたのか?」「どんな状況だったのか?」
- 共感:「どう感じたのかな?」「つらかったのかもしれないね」
- 対話:「じゃあ、次はどうしたらいいと思う?」「別のやり方もあるよ」
このサイクルを繰り返すことで、子どもは自分の気持ちを言語化し、行動の選択肢を学んでいくことができます。
行為を許すのではなく、「気持ち」を理解する
ここで誤解してほしくないのは、「行為を許すべきだ」という話ではないということです。
暴力や暴言などの行為は、はっきりと「いけない」と伝える必要があります。
しかし、だからといって「怒り」「不安」「悲しみ」といった気持ちそのものを否定する必要はありません。むしろ、「そんなふうに感じたことはわかるよ」と伝えることが、子どもにとっては救いになります。
行為は制限しても、感情や意図は受け止める。
このバランスが、子どもの心の安全基地になります。
まとめ:「なぜそうしたのか」を聞く勇気を持つ
子どもの問題行動に直面したとき、大人は「正さなければ」という思いから、つい行為に焦点を当てがちです。
しかし、行動の裏にある「意図」を理解することで、子どもとの関係性は深まり、本人の気づきや成長を引き出すことができます。
最後にポイントを整理します。
- 子どもの「行為」だけを叱ると、本音や気持ちは伝えられなくなる
- 「意図」と「行為」を分けて受け止めると、信頼関係が深まる
- 感情を認め、行動については対話で学ぶスタイルが有効
- 大人の“理解しようとする姿勢”が、子どもの社会性を育てる
- 行為は制限しても、意図や感情は受け止めていい
子どもの一つひとつの行動の奥にある「思い」に目を向けてみましょう。
その姿勢こそが、子どもが安心して自分らしく育つための土台になるのです。
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