子育てや教育の現場で、「ちゃんと約束したのに守らなかった」「また嘘をついた」「信じていたのにがっかり」という場面に出くわすことがあります。
そんなとき、大人が感情的になったり、過剰に叱責してしまうと、子どもが本当に学ぶべき「約束の意味」を理解するチャンスを逃してしまうことがあります。
この記事では、「約束を破った子どもにどう向き合い、どう導くか」について、教育心理学や発達段階の視点をふまえ、家庭や学校ですぐに使える指導方法を解説します。
なぜ子どもは約束を破るのか?
まず知っておきたいのは、子どもが約束を破ること自体は特別なことではないという点です。
その背景には、以下のような事情があることが多いのです。
- 衝動性:やるつもりだったけど、目の前の誘惑に負けた
- 記憶の曖昧さ:約束自体をしっかり覚えていなかった
- プレッシャー:守れなかったことを恐れて隠した
- 理解不足:そもそも約束の意味を正しく理解していない
これらは、いずれも成長のプロセスの中で徐々に学んでいくべきことであり、「破った=悪い子」と決めつけるべきではありません。
約束を破ったときに大切にしたい3つのステップ
子どもが約束を破った場面では、「ただ叱る」だけでなく、子どもが自分の行動を振り返り、次に生かすための対話が必要です。以下のステップを意識しましょう。
ステップ1:事実確認と冷静な対話
「◯◯について約束したよね。どうして守れなかったのかな?」
「そのとき、どんな気持ちだった?」
まずは事実を確認し、子どもの話を感情を挟まず、冷静に聞く姿勢が大切です。
「何が起きたのか」「なぜそうしたのか」を子どもの視点から引き出すことで、自分の行動を客観視する力が育ちます。
ポイント:
- 怒る前に、まず「聞く」
- 「なぜ?」ではなく「どうしてそうなったの?」と開かれた問いを使う
- 嘘をついていると感じても、頭ごなしに否定しない
ステップ2:「信頼」と「責任」のバランスを伝える
「約束ってね、“信じてもらってる”ってことなんだよ」
「約束を守ることって、自分の行動に責任をもつことなんだよ」
ここで重要なのは、約束を守る意味を「罰」ではなく「信頼」と「責任」で伝えることです。
「守らないと怒られるから」ではなく、「守ることで人との関係がよくなる」ことを理解させましょう。
ポイント:
- 約束とは「信じている」ことの証である
- 破られた側の気持ちに目を向けさせる
- 守れなかったことの責任を取る経験を丁寧にサポートする
ステップ3:次につながる「選択肢」を一緒に考える
「次からどうしたらいいと思う?」
「今回はできなかったけど、次はどうする?」
ここでは、「守れなかったこと」よりも「次にどうするか」に焦点を移します。
行動の改善は、子ども自身が「選び、決める」ことが重要です。
大人が一方的に決めてしまうと、また同じ失敗を繰り返しやすくなります。
ポイント:
- 子ども自身が「やり直す」選択をすることで内発的動機が育つ
- 「許す」とは「次のチャンスを与えること」
- 場合によっては、一緒に新しいルールや約束を再設定してもよい
年齢別・約束違反への対応の工夫
発達段階に応じて、声かけや指導の仕方を少しずつ変えることで、より効果的に子どもが学びを深められます。
低学年(6〜8歳)
- 覚えていられないことも多い →「見える化」する
- 罰よりも「やり直しの機会」を大切に
- 短期的な目標(例:明日まで、3日間だけ)で練習
中学年(9〜10歳)
- なぜ守る必要があるか「意味づけ」が重要
- 友達との約束も守れたかどうかを振り返る機会を持つ
- 過度な厳しさより、ルールの一貫性が重要
高学年(11〜12歳)
- 自分の選択に責任を持たせるチャンス
- 第三者(友人・先生・家族)との関係の中で信頼の価値を体感
- 言い訳よりも「改善策」を一緒に考える関係性を
「罰する」のではなく「導く」視点を
「約束を破った」という事実に対して、「何を感じ、どう学ばせるか」が教育の本質です。
罰を与えることで一時的に行動を抑制できても、本質的な内面の成長にはつながりません。
重要なのは、次のような視点を持つことです:
- 子どもを責めるのではなく、信じ直す
- 行動の背景にある気持ちを読み解く
- 信頼とは「関係性を何度でも修復できる力」
約束を破ったときこそ、人との信頼関係や責任の意味を学ぶ絶好の機会。
一度の失敗を、「成長のきっかけ」に変えるための大人の関わりが、子どもの未来に大きな影響を与えるのです。
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