「ありがとう」「大丈夫?」「どうしたの?」
そんな言葉を自然に口にできる子に育ってほしい――。
子育て中、思いやりのある子どもを育てたいと願う保護者は多いのではないでしょうか。
思いやりは、学力以上に人生を支える力であり、非認知能力や人間関係力の土台です。この記事では、思いやりの気持ちを育むための環境づくりや関わり方について、教育・心理の視点を交えて解説します。
思いやりは「教える」ものではなく「育つ」もの
思いやりは、「こうしなさい」と教え込んで身につくものではありません。
それは、人の気持ちを想像し、寄り添う力――つまり「共感力」や「情動の調整力」など、非認知能力に属する力が背景にあるからです。
子どもは、親や周囲の大人の行動を通して、「人はどう振る舞うか」「相手の気持ちはどう考えるか」を学んでいきます。
そのため、まずは育つ土壌=家庭の雰囲気や日常の会話がカギを握ります。
たとえば、家の中で誰かが困っていたときに、他の家族が声をかけて手を差し伸べる。
そんな何気ないやりとりの積み重ねが、子どもの「思いやるとはこういうことなんだ」という感覚を自然に育てていくのです。
共感の感覚は「受け止めてもらう経験」から始まる
思いやりのベースには「共感力」があります。
共感とは、相手の感情に気づき、それに対して自分も何らかの気持ちを動かすことです。
この力は、生まれつき備わっている部分もありますが、多くは育つものです。
その育ちの始まりは、自分の気持ちを受け止めてもらう経験です。
「怖かったね」「悔しかったね」「楽しかったね」――
子どもの言動の背景にある感情に気づき、言葉にしてあげることで、子どもは自分の感情に気づく力(情動認知)が育ちます。
自分の気持ちを理解してもらえる体験を繰り返すと、今度は「相手の気持ち」も分かるようになっていきます。
思いやりは、「まず自分が大事にされる」ことから始まるというのは、こうしたプロセスによるのです。
思いやりを育てる日常の関わり方5選
- 気持ちの実況中継をする
「〇〇くん、転んじゃったね。痛そうだったね」と言葉にすることで、出来事と感情の関係を学びます。 - 人の良さや努力に目を向ける習慣をつける
「お店の人、寒いのに外で頑張ってたね」など、日常の中にある他者へのリスペクトを共有しましょう。 - 「~してくれてありがとう」を伝える
「お手伝いしてくれて助かったよ」と言葉で感謝を伝えることで、子どもも自然と使うようになります。 - お互いの意見が違うときこそ話す
「ママはこう思ったけど、あなたはどう思った?」と対話を大事に。相手を理解する姿勢を見せることが大切です。 - 人の立場に立って考える機会をつくる
絵本の登場人物の気持ちを一緒に考えたり、ニュースを見て「どう思った?」と問いかけることも効果的です。
思いやりは「行動」で表れる
思いやりは、心の中にあるだけでは育ちません。
「困っている友達にハンカチを貸す」「先生の荷物を持つのを手伝う」など、行動に移す経験があって初めて、社会的なスキルとして身についていきます。
ここで大切なのは、「やりなさい」と命じるのではなく、「どうしたら相手が嬉しいと思う?」と子ども自身に考えさせることです。
その問いかけが、想像力や判断力の土台を作ります。
さらに、「やってよかった」「ありがとうって言われた」などのポジティブな経験が積み重なることで、「またやってみよう」という自発性が育まれていきます。
思いやりを支える「環境」と「モデル」の存在
子どもが思いやりを育てるためには、何よりも安心できる環境とよいお手本(ロールモデル)が必要です。
家庭の中で、保護者が感情を丁寧に表現し、相手のことを思って行動している様子を見せる。
「ありがとう」「ごめんね」「どうしたの?」といった言葉が自然に飛び交う空間にいること。
それが何よりの学びになります。
また、兄弟姉妹や友達との関わりの中でも、時にはケンカやすれ違いがあっても大丈夫。
その後の対話や仲直りの場面で、どう関わるかを一緒に考える時間が、思いやりの力をさらに深めてくれます。
まとめ|思いやりは「人と生きる力」
思いやりのある子に育てることは、社会で生きていくための大きな土台を作ることでもあります。
学力よりも先に、誰かの気持ちに寄り添えること、自分も大切にできることが、子どもの未来を豊かにします。
子どもに思いやりを教えることは難しいかもしれません。
でも、「日々の関わり」を通じて、育むことはできます。
今日も、「ありがとう」「どう思う?」「嬉しかったね」と、やさしい一言を子どもに届けてみてください。
その一歩が、子どもの心を育てる種まきになります。
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