6月に入ったあたりから、なんだかうちの子の様子がおかしい。
朝、声をかけても布団から出てこない。ごはんの量が減った。いつもなら笑うようなテレビを見ても、ぼーっとしている。ちょっとしたことで泣いたり怒ったりする日が増えた。
「反抗期かな?」「怠けてるだけ?」「学校で何かあった?」
いろいろ考えてしまいますよね。でも、もしかするとその原因は、意外なところにあるかもしれません。
窓の外を見てみてください。——雨、続いていませんか?
じめじめした天気が、子どもの心にも影響している
梅雨の時期に気分が沈みやすくなるのは、大人だけの話ではありません。実は、子どものほうがこの季節の影響を受けやすいとも言われています。
その理由は、子どもの体がまだ発達の途中にあるから。
私たちの体には、体温や呼吸、睡眠のリズム、気分の安定などを自動的に調整してくれる仕組みがあります。ところが梅雨の時期は、気圧が下がったり上がったりを繰り返し、湿度は高く、太陽の光を浴びる時間も減る。この環境の変化に、大人の体は何とか対応できても、子どもの体は追いつけないことがあるんです。
すると、こんな変化が現れます。
- 朝起きられない、日中もぼんやりしている
- 頭が痛い、お腹が痛いと訴える
- イライラしやすくなる、急に泣く
- やる気が出ない、好きなことにも興味を示さない
- 「学校に行きたくない」と言い出す
どれも、外から見ると「だらけている」「わがまま」「気分屋」に見えてしまいがちです。でも本人も困っている。「なんかしんどい」「でも何がしんどいかわからない」——子ども自身がそんな状態に戸惑っていることも多いんです。
体の中で何が起きているのか
少しだけ、体の仕組みの話をさせてください。難しい言葉は使いません。
私たちの体には、「活動モード」と「休息モード」を切り替えるスイッチのようなものがあります。朝は活動モードに切り替わるから元気に動けるし、夜は休息モードになるから眠くなる。
ところが梅雨の時期は、気圧や湿度の変化によって、このスイッチの切り替えがうまくいかなくなることがあります。
朝なのに体が「休息モード」のまま。だから起きられない。日中もぼんやりする。逆に、夜になっても「活動モード」が残っていて寝つけない。寝不足が続いて、ますます調子が悪くなる。
大人でも「梅雨どきは頭が重い」「古傷が痛む」という経験がありますよね。子どもの場合、それが頭痛やお腹の痛み、気分の不安定さとして出やすいのです。
特に、自分の体調や気持ちを言葉にするのがまだ難しい年齢の子は、「なんか嫌だ」「学校行きたくない」という表現でしかSOSを出せないことがあります。
家庭でできる5つの過ごし方の工夫
天気を変えることはできません。でも、家の中の環境や過ごし方を少し工夫するだけで、子どもの心と体はずいぶん楽になります。
① 朝の光を「つくる」
梅雨の朝はどんより暗い。でも、体のスイッチを「活動モード」に切り替えるには、光の力がとても大きいんです。
曇りの日でもカーテンを開ければ、夜よりはずっと明るい光が入ります。それだけでも体は「朝が来た」と認識してくれます。
雨が続いて部屋が暗い日は、リビングの照明を少し明るめにするだけでもOK。朝ごはんを食べるテーブルの近くを明るくしておくと、自然と目が覚めやすくなります。
② 「いつも通り」の生活リズムを、ゆるく守る
雨で外に出られない日が続くと、生活のリズムが崩れがちです。夜ふかしして朝寝坊、休日は昼まで寝ている——大人でもやってしまいますよね。
でもこの「リズムの乱れ」が、体のスイッチをさらに狂わせてしまいます。
完璧でなくていいので、起きる時間、寝る時間、ごはんの時間をだいたいそろえておく。平日と休日の起床時間の差を1時間以内に抑えるだけでも、体の調子はだいぶ違ってきます。
③ 食べ物で「心の材料」を補給する
気分の安定に関わる体の働きには、食事から取る栄養が深く関わっています。
特にこの時期に意識して取りたいのは、こんな食べ物です。
- バナナ、牛乳、卵、チーズ:気持ちを落ち着かせる働きを助ける栄養素が含まれています
- 納豆、魚、豆類、ナッツ:体の調整機能を支えるミネラルが豊富です
「今日の朝ごはんにバナナを1本追加する」「おやつにチーズを出してみる」——それくらいの小さな工夫で十分です。
あわせて、水分補給も忘れずに。湿度が高いと汗をかいている実感がなくても、体からは水分が失われています。水分が足りないと集中力が落ちたりイライラしやすくなったりするので、こまめに飲む習慣をつけておくと安心です。
④ 体を動かす「ちょこっと運動」の時間を作る
外遊びができない日が続くと、子どもの体にエネルギーがたまっていきます。発散する場所がないと、そのエネルギーがイライラや落ち着きのなさとして出てくることも。
といっても、室内で本格的な運動をする必要はありません。
- 親子でストレッチを3分やってみる
- 音楽に合わせて体を動かす
- 廊下で「けんけんぱ」をする
- トランプやボードゲームで盛り上がる
体を動かすだけでなく、声を出して笑ったり、誰かと一緒に何かをしたりすること自体が、気分の入れ替えになります。
「雨の日の定番メニュー」をいくつか持っておくと、憂うつな日の過ごし方がぐっと楽になります。
⑤ 「そうなんだね」を増やす
これが5つの中でいちばん大切かもしれません。
「なんかダルい」「学校イヤだ」「お腹痛い」——こうした子どもの言葉に対して、つい「気のせいでしょ」「みんな行ってるよ」と返したくなること、ありますよね。
でも、このタイミングで「そっか、ダルいんだね」「お腹痛いのはつらいね」と一度受け止めると、子どもの表情が少し変わることがあります。
否定されなかった。聞いてもらえた。——その安心感が、子どもの中にたまっている「モヤモヤ」を少しずつ和らげてくれます。
解決しようとしなくていい。原因を突き止めなくていい。ただ「聞いたよ」「わかったよ」と伝えるだけでいいんです。
こんなサインが続いたら、ひとりで抱えないで
季節の影響による一時的な不調であれば、梅雨明けとともに回復していくことが多いです。
ただし、以下のような状態が2週間以上続く場合は、季節だけでは説明がつかない可能性もあります。
- 好きだったことに関心を示さなくなった
- 表情が乏しく、ほとんど笑わなくなった
- 学校に行きたがらない日が週の半分以上になった
- 食事をほとんど食べない、または極端に食べ過ぎる
- 「消えたい」「いなくなりたい」といった言葉が出る
こうしたサインが見えたときは、家庭だけで何とかしようとせず、学校のスクールカウンセラーや、地域の教育相談窓口、小児科や児童精神科など、専門の人の力を借りてください。相談すること自体が、子どもを守る大きな一歩です。
雨の季節を、親子で乗り越えるチャンスに
梅雨は確かに気分が沈みやすい季節です。大人だって「早く夏にならないかな」と思いますよね。
でも、この時期に「うちの子、ちょっと元気ないな」と気づけたこと。それ自体が、お子さんのことをちゃんと見ている証拠です。
雨の日に一緒にホットケーキを焼いてみる。窓の外の雨音を聞きながらごろごろする。「今日はのんびりする日にしよう」と宣言してみる。
そんなちょっとした時間が、子どもにとっては「雨の日も悪くないな」という記憶になっていくかもしれません。
空の雲はいつか晴れます。それまで、焦らず、ゆっくり。親子で一緒に過ごしていきましょう。
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