テスト前、計画を立てて勉強を始めた。でも3日目で予定通りに進まなくなって、そのまま全部やめてしまった——。
ドリルの問題が解けなくて、鉛筆を投げた。「もうやらない」とふてくされて、机から離れた——。
こういう場面、お子さんに心当たりはありませんか?
大人からすると「もうちょっと粘ればいいのに」「やり方を変えればいいのに」と思いますよね。でも、子どもにとっては「うまくいかない=もう終わり」になってしまうことが、実はとても多いんです。
ここで必要なのは、「もっとがんばれ」という気合いではありません。
必要なのは、「うまくいかないとき、やり方を変えてみる力」。つまり、自分で軌道修正できる力です。
今日はこの力をどうやって育てていけるか、5つの方法を一緒に見ていきましょう。
そもそも「軌道修正できる力」って?
たとえ話をひとつ。
カーナビで目的地を設定してドライブに出かけたとします。途中で道を間違えたら、カーナビは何と言いますか?「もう帰りましょう」とは言いませんよね。「ルートを再探索しています」と、別の道を案内してくれます。
子どもの学習にも、この「ルート再探索」の力があると、ずいぶん楽になります。
計画通りにいかなかったら、計画を立て直す。このやり方で解けなかったら、別の方法を試してみる。昨日の失敗から「じゃあ今日はこうしてみよう」と考える。
この一連の動きが、「軌道修正できる力」です。
この力がある子は、壁にぶつかっても立ち止まる時間が短い。「ダメだった、おしまい」ではなく、「ダメだった、じゃあ次どうしよう」と自然に考えられるようになります。
反対に、この力がまだ育っていないと、ひとつの失敗で気持ちが折れてしまい、「自分はできない子なんだ」と思い込んでしまうことも。
では、この力はどうやって育てていけるのでしょうか。
方法①:「終わったあと」に2分だけ振り返る
勉強が終わったら、すぐに遊びに行く。テストが返ってきたら、点数だけ見て終わり。——これ、もったいないんです。
たった2分でいいので、「今日の勉強、どうだった?」と振り返る時間を作ってみてください。
「どこが難しかった?」 「どこはスムーズにできた?」 「次やるとしたら、何か変えてみたいことある?」
最初は「べつに」「わかんない」と返ってくるかもしれません。それでも続けていくと、少しずつ「算数の文章題が時間かかった」「漢字は意外とできた」と自分の学びを言葉にできるようになっていきます。
この「振り返り」は、自分の状態を客観的に見る練習です。カーナビに例えるなら、「今どこにいるか」を確認する作業。現在地がわからなければ、ルートの再探索はできません。だからこそ、振り返りが軌道修正の第一歩になるんです。
方法②:「答えが決まっていない遊び」を取り入れる
パズル、ボードゲーム、ブロック、ごっこ遊び、工作——こうした遊びには、「正解がひとつではない」という共通点があります。
たとえばボードゲームで負けそうになったとき、「じゃあ次はこの作戦でいこう」と頭を切り替える。ブロックで思った形にならなかったとき、別のパーツを探してみる。
遊びの中で自然に「うまくいかない→別の方法を試す」を繰り返しているんです。
特におすすめなのは、ルールが毎回少し変わるタイプのゲームです。「前回と同じやり方」が通用しないから、その場で考えて対応する力が鍛えられます。
勉強の場面でいきなり「やり方を変えてみよう」と言っても、子どもにはピンとこないことがあります。でも、遊びの中で「うまくいかないなら別の手を考える」を体験している子は、勉強でも同じことができるようになりやすいんです。
方法③:目標は「子ども自身」に決めさせる
「今日は漢字ドリル3ページやろうね」と大人が決めると、子どもは「やらされている」感覚になります。達成しても「やった!」という気持ちは薄いし、達成できなかったら「自分はダメだ」になりやすい。
逆に、「今日はどこまでやってみたい?」と聞いて、子ども自身に決めさせると、ちょっと面白いことが起きます。
自分で「2ページ」と決めた子は、その2ページに対して責任感を持ちます。1ページ目でつまずいたとき、「自分で決めた目標だから、何とかしたい」という気持ちが生まれる。そこで「全部一気にやるんじゃなくて、半ページずつやってみようかな」と自分で工夫し始めることも。
これが、軌道修正の芽です。
大人の役割は、目標を決めてあげることではなく、子どもが立てた目標に対して「いいね、やってみよう」と背中を押すこと。そして、途中でうまくいかなかったら「目標を変えてもいいんだよ」と伝えること。
計画は変えていい。むしろ、変えられるほうがすごい。その感覚を持てるようになると、子どもの学びはぐんと柔軟になります。
方法④:「困っている気持ち」を話せる空気を作る
軌道修正が上手な子には、ひとつの共通点があります。
それは、「わからない」「困っている」と言えること。
逆に、軌道修正が苦手な子は、困っていても黙ってしまいがちです。「わからないって言ったら怒られるかも」「できないって思われたくない」——そんな気持ちが邪魔をして、助けを求められない。
だからこそ、家庭の中に「困っているって言っていいんだよ」という空気を作ることが大切になります。
具体的には、こんなことから始められます。
- 子どもが「わからない」と言ったとき、「何がわからないの?ちゃんとやった?」ではなく、「どこまではわかった?」と聞く
- 「お母さんも今日、仕事でうまくいかなかったんだよね」と、大人も困ることがあると見せる
- 正解を教えるのではなく、「どうしたらいいと思う?一緒に考えてみようか」と並走する
「困っている」と口に出せること自体が、軌道修正の入り口です。一人で抱え込んでいる間は、方向転換のしようがありませんから。
方法⑤:小さな「できた」をこまめに積み上げる
5つ目は、一番地味に見えて、一番効果が大きいかもしれません。
大きな目標をドーンと掲げて、長い時間をかけて達成する——これは大人でも難しいことです。ましてや子どもにとっては、ゴールが遠すぎると途中で心が折れてしまいます。
だから、目標をうんと小さく刻みます。
「今日は1問だけ解いてみよう」「このページの漢字を3つだけ覚えよう」「音読を1段落だけやってみよう」。
小さいから、達成できる確率が高い。達成できたら「おっ、できたね」と声をかける。すると子どもの中に「自分はできる」という感覚が少しずつたまっていきます。
この感覚がたまると、壁にぶつかったときの反応が変わってきます。「前もできなかったけど、やり方変えたらできたし、今回もなんとかなるかも」——過去の「できた」が、未来の軌道修正を支えてくれるんです。
「がんばれ」よりも「やり方変えてみる?」
ここまで5つの方法を見てきました。
- 勉強のあとに2分の振り返り
- 答えのない遊びで「別の手」を考える体験
- 目標は子ども自身に決めさせる
- 「困っている」と言える空気を作る
- 小さな「できた」をこまめに積み上げる
どれも特別な教材やプログラムは必要ありません。日々の暮らしの中に、少しずつ取り入れられるものばかりです。
子どもが壁にぶつかったとき、私たちはつい「がんばれ」「もう少しやってみなさい」と言いたくなります。でも、本当に子どもの力になるのは、「うまくいかなかったら、やり方を変えてもいいんだよ」という一言かもしれません。
壁を正面から突き破る力よりも、壁の横に回り道を見つけられる力のほうが、長い目で見ると子どもを遠くまで連れていってくれます。
今日の勉強のあと、お子さんにこう聞いてみてください。
「今日やってみて、次はちょっと変えてみたいこと、ある?」
その問いかけが、軌道修正できる力を育てる、最初の一歩になります。
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