夕飯どき、テレビのチャンネルをめぐって兄妹が言い合いを始める。「俺が先に見てたのに!」「私だってずっと待ってたもん!」——お決まりの光景に、ため息が出てしまう。そんな経験、ありませんか。
「うちの子、口が達者で、いつも言い負かそうとするんです」。そんな声を、これまで何度も聞いてきました。でも、その姿を少し違う角度から眺めてみると、面白いことに気づきます。言い合いが得意な子は、実は「話し合う力」の芽を持っているんです。
ただ、その芽を放っておくと、ただの「勝ち負けゲーム」で止まってしまう。せっかくの力が、相手を打ち負かすことだけに使われてしまうんですね。
では、その芽を「みんなでいい答えにたどり着く力」へと育てるには、どうしたらいいのでしょう。今日はそのヒントを、4つに分けてお話ししていきますね。
そもそも「議論が上手な子」って、どんな子だと思いますか?
ちょっと想像してみてください。自分の意見をハキハキ言える子。反対されてもひるまず主張し続ける子。——こういう子を「議論が上手」だと思う方、多いかもしれません。
でも、私が「この子はすごいな」と感じるのは、ちょっと違うタイプの子なんです。それは、相手の話をよく聞いて、最初は考えていなかった答えにみんなで一緒にたどり着ける子。
自分の意見を通すことより、話し合いそのものを前に進めていく。そんな子が、これから先とても頼りにされる大人になっていきます。じゃあ、そういう力ってどうやって育つの? 順番に見ていきましょう。
1つめ:まずは「聞く」から。相手の言葉のウラ側をのぞいてみよう
話し合いの土台になるのは、実は「話す力」ではなく「聞く力」なんです。ちょっと意外でしょうか。
「人の話をちゃんと聞きなさい」。これ、私たちも子どものころに言われましたよね。でも、ただ黙って音として耳に入れているだけでは、あまり意味がありません。大切なのは、相手が「本当は何を言いたいのか」までのぞいてみることなんです。
たとえば、お友達が「今日の給食、あんまりおいしくなかった」と言ったとします。ここで、
「えー、そう? ぼくはおいしかったけどな」
と返したら、そこで話はプツンと切れてしまいます。でも、
「そうなんだ。どんなところが、いまいちだった?」
と一言たずねるだけで、会話がぐっと転がり始めるんです。「野菜が煮すぎでやわらかすぎた」「昨日と同じメニューでつまらなかった」——相手の本当の気持ちが見えてくる。
ご家庭でも、お子さんが何か言ったとき、すぐに正解を返さずに「どうしてそう思ったの?」と聞いてみる。それだけで、お子さんは「聞いてもらえた」とうれしくなり、もっと話したくなるものです。
2つめ:「なんで?」の魔法で、考えをどんどん掘り下げる
相手の話が聞けたら、今度はこちらから問いかける番です。いい質問は、シャベルのようなもの。会話をどんどん深いところまで掘っていってくれます。
いちばん手軽で、いちばん効くのが「なんで?」の連発です。
- 「なんで、そう思ったの?」
- 「どうして、そうなるのかな?」
- 「ほかのやり方はないのかな?」
こうやって「なんで?」を重ねていくと、最初はぼんやりしていた意見の下から、その子なりの理由や体験が顔を出してきます。3歳くらいの子が「なんで? なんで?」と聞きまくって親を困らせる、あの時期がありますよね。あれ、実は最強の考える練習なんです。
もうひとつ、おすすめの問いかけがあります。それが「もしも〇〇だったら、どうなる?」という想像の質問。「もしも学校が週7日だったら?」「もしも夏休みが1年あったら?」。こんなふうに問いかけると、子どもの頭の中でいろんな可能性がパッと広がっていきます。
3つめ:ごちゃごちゃの意見を「仕分け」してみる
話し合いが盛り上がってくると、いろんな意見が飛び交って、なんだか机の上が散らかったみたいな状態になります。そこで役立つのが、情報を整理して考える力です。
ここで大事なのは、「ムカつくから反対!」ではなく、「なぜそう言えるのか」を落ち着いて説明できること。たとえば、クラスでお楽しみ会の出し物を決めるとき、こんなふうに整理してみるんです。
- 出てきた意見を、まず全部書き出してみる(劇、ダンス、クイズ大会…)
- それぞれのいいところ、大変なところを並べてみる
- 「準備にかかる日数」「みんなが楽しめるか」など、決める基準で見比べる
こうやって目に見える形にすると、「なんとなく劇がいい」だった気持ちが、「準備は大変だけど、全員に役があるから劇がよさそう」という、理由のある考えに変わっていきます。気持ちだけでぶつかっていたものが、根拠のある話し合いに変わる瞬間です。
4つめ:バラバラの意見をくっつけて、新しい答えを生み出す
さて、話し合いのゴールは、勝つことではありません。「みんなで、もっといい答えを見つけること」です。ここで登場するのが、自由に思いつく力。
たとえばお楽しみ会で「劇がいい」「クイズがいい」と意見が2つに割れたとします。ふつうなら多数決で片方に決めますよね。でも、ここでちょっと立ち止まって考えてみると——「劇の中に、お客さんが答えるクイズを入れちゃえば?」なんてアイデアが飛び出すかもしれません。
どちらか一方を選ぶのではなく、両方を混ぜて、まったく新しいものを作る。これができる子は、大人になっても「あの人に相談すると、いつも思ってもみなかった答えが返ってくる」と頼られる存在になります。
「今あるものの中から選ぶ」だけでなく、「ないものを作っちゃう」。この発想の転換こそ、話し合いのいちばん楽しいところなんですね。
いちばん覚えておきたいこと
今日は、話し合いを前に進める4つの力をお話ししました。ぎゅっとまとめると、こんな流れです。
- 相手の本音まで「聞く」
- 「なんで?」で「たずねる」
- 意見を並べて「整理する」
- 混ぜ合わせて「新しく作る」
この4つがそろうと、言い合いは「勝ち負けのケンカ」から「一緒に答えを探す時間」へと、姿を変えていきます。
お子さんが誰かと言い合いになったとき、「ケンカはやめなさい」と止める前に、ちょっとだけ見守ってみませんか。そのやりとりの中に、これからの人生を支える大きな力の芽が、こっそり隠れているかもしれません。話し合いは、勝つためのものではなく、二人で少しずつ賢くなっていくための時間なんですから。
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