運動会の練習で、いつもクラスの後ろの方を走っているお子さん。徒競走のたびに「また負けちゃった」と肩を落とす姿を見ると、こちらの方が胸が痛くなりますよね。
「うちの子は運動神経がないみたいで……」
こんな相談、実は本当によく受けます。でも、そのたびに私はいつも同じことを伝えています。運動が得意か不得意かは、生まれつき決まっているものではなく、実は経験の積み重ねでどんどん変わっていくものなんです。
「運動神経」という言葉、実は正体不明です
そもそも「運動神経がいい」というのは、専門的に見ると、何か一つの能力を指す言葉ではありません。ボールを投げる力、バランスを取る力、リズムに合わせて動く力。これらはそれぞれ別の力で、得意なものと苦手なものが人によってバラバラだったりします。
ある子は鉄棒が得意なのに、ボール遊びは苦手。別の子はダンスなら誰にも負けないのに、走るのは遅い。これって、実は普通のことなんです。「運動が苦手」の一言でまとめてしまうと、その子が本当に得意なものまで見えなくなってしまうことがあります。
大事なのは、「できる・できない」ではなく、やればできそうだと思える感覚があるかどうか。この感覚があるかないかで、子どもが体を動かすことに向かう姿勢がまったく変わってくるんです。
その感覚、実は3つの積み重ねでできています
「やればできそう」という感覚、どうやって育っていくのか。ここが気になるところですよね。実はこの感覚、大きく3つの積み重ねから生まれています。
1. 「できた!」の記憶
鉄棒で初めて前回りができた瞬間。リレーで思いきり走れた日。こうした小さな成功体験が、子どもの中に「自分は体をうまく使える」という記憶として残っていきます。
一度でも「できた」を経験した子は、次の挑戦のときも「今回もいけるかも」と思えるようになります。逆に、成功体験がほとんどないまま挑戦だけを重ねると、体を動かすこと自体が「またうまくいかないかも」という不安の対象になってしまうんです。
2. 「自分で調整できた」という実感
ボールを遠くまで投げるには、どのくらいの力で、どの角度で投げればいいか。跳び箱を跳ぶには、どのタイミングで踏み込めばいいか。
こうした「自分の体を、自分の意思でコントロールできた」という実感は、想像以上に大きな自信につながります。誰かに教えられて動くのではなく、自分で試して、調整して、うまくいく。この経験こそが、次への意欲を静かに育てていくんです。
3. 誰かに見てもらえている感覚
「よく頑張ったね」「前より速くなったね」。仲間や大人からのこうした言葉、実は子どもにとって想像以上に大きな意味を持っています。
特に小学生くらいの時期は、自分一人で「できた」と感じるより、誰かに認めてもらえたときの方が、その体験がずっと強く心に残るものです。
家庭でできること、実はとてもシンプルです
理屈はわかった、でも具体的に何をすればいいのか。ここからは、家庭で今日から試せる関わり方を紹介していきます。
まず、親が楽しそうに体を動かしてみる
夕方の散歩を少し遠回りにしてみる。買い物先まで歩いてみる。休みの日に近所の公園に足を運んでみる。特別な運動である必要はありません。
子どもは「運動しなさい」という言葉より、大人が楽しそうに体を動かしている姿から、ずっと多くのことを受け取っています。以前、毎週末に父親と散歩をしていた子が「歩くの、実は好きなんだよね」とつぶやいた場面を見たことがあります。誰も「歩きましょう」と教えたわけではないのに、です。
褒め言葉は、具体的な変化を伝える
「すごいね」だけで終わらせず、少しだけ言葉を足してみます。
「前より3秒速く走れてたよ」 「今日はボール、5回中3回もキャッチできたね」
数字や具体的な場面を交えると、子ども自身も自分の成長をはっきりイメージできます。ぼんやりした褒め言葉より、こうした具体的な言葉の方が、記憶にしっかり残るんです。
苦手なことは、思いきり小さく分ける
縄跳びが1回も跳べない子に「10回跳んでみよう」と言っても、正直ハードルが高すぎます。まずは1回。次は3回。5回できたら、もう十分すごいことです。
小さすぎるくらいの目標を、一つずつクリアしていく。この積み重ねが、いつの間にか大きな自信になっていきます。
実際に、こんな変化がありました
ある小学校では、体育の授業に器械体操やダンス、タグラグビーなど、普段あまりやらない種目を年間を通して取り入れてみたそうです。すると、「運動が苦手」と言っていた子どもたちの中から、「あ、これなら得意かも」と気づく子が次々と出てきました。
球技は苦手でも、ダンスなら誰よりもリズム感がある。走るのは遅くても、バランス系の動きは得意。種目を広げてみるだけで、その子の中に隠れていた「得意」が見つかることがあるんです。
別のある地域では、親子で毎週末ジョギングをする取り組みを続けたところ、最初は嫌がっていたお子さんが、いつの間にか「今週も走ろうよ」と自分から誘うようになったという話も聞きました。
運動が得意か苦手かは、才能で最初から決まっているものではありません。「できた」の記憶を積み重ね、自分で体をコントロールできた実感を持ち、誰かに見てもらえていると感じられる。この3つが揃ったとき、子どもは自然と体を動かすことを楽しみ始めます。
今日、お子さんが何か体を動かしたら、「前より、ここが上手になったね」と、具体的な一言をかけてみませんか。その小さな言葉の積み重ねが、「運動が苦手」から「やってみようかな」へと、子どもの気持ちを静かに変えていくはずです。
質問に答えてAI分析する家庭向けレポート作成ツール、家庭完結型「お子さまのトリセツ」のnote記事
▶https://note.com/kidsla_jp/n/nb37f025bb952
文科省や各自治体の指標を基にした教員ツール「教員自己分析・内省カルテ:自分のためのリフレクションとキャリアデザイン」のnote記事 ▶https://note.com/kidsla_jp/n/ndf777e987983
学習指導要領の趣旨(主体的・対話的で深い学び等)を基にした教員ツール「授業デザインメーカー:学級の実態から授業構成・板書・評価を考える」のnote記事▶https://note.com/kidsla_jp/n/n4280716ee931
キッズ学習アドバイザーでは、子どもの発達や学習支援に関する情報を多数発信しています。ぜひ、関連記事もご覧ください!
ブログ記事:https://kidsla.jp/blog/
note:https://note.com/kidsla_jp

