「頑張ってえらいね」「もっと頑張ろう」──
日々、子どもへの声かけとしてよく使われる言葉です。
もちろん、努力することの大切さを伝えるのは教育の本質でもあります。
しかし一方で、「頑張ることだけを肯定」する声かけが、子どもの心を知らず知らずに追い詰めることもあるのです。
この記事では、「努力至上主義」のリスクと、子どもの心を健やかに育てるために必要な視点を、学習支援と発達心理の観点から解説します。
「頑張ること」は尊い。しかし「頑張り続ける」ことは難しい
人が何かを成し遂げようとするとき、「努力」や「粘り強さ」は確かに必要な要素です。
ところが、現実には次のような子どもが少なくありません。
- 何をするにも「もっと頑張らなきゃ」と思って疲れている
- 成績が上がらない自分を「頑張っていない」と責めてしまう
- 人と比べて落ち込む
- 頑張ることをやめた瞬間、「自分には価値がない」と感じてしまう
これらはすべて、「頑張る=良いこと」という一面的な価値観が強くなりすぎた状態です。
言い換えれば、“頑張っていない自分”を認められなくなってしまうのです。
なぜ「頑張ったね」だけでは子どもに響かないのか?
頑張りの「結果」が伴わないと自己否定につながる
「こんなに頑張ったのに…」と結果が出なかったとき、子どもはこう感じます。
- 「頑張ったのにダメだった。自分には価値がない」
- 「もっと頑張らなきゃいけないのに、自分は弱い」
つまり、「頑張る=良いこと」と思い込むほど、うまくいかない現実と自己評価が結びつきやすくなるのです。
「頑張れ」が命令に聞こえることもある
大人は励ましのつもりで「頑張れ」と言っても、すでに疲れていたり、限界を感じている子どもにとっては、プレッシャーや強制の言葉に聞こえることがあります。
そうなると、子どもは「もう頑張りたくない」と思っていても、それを言い出せなくなり、心の中にフタをしてしまいます。
頑張るより大切な3つのこと
1. 「今の気持ち」に寄り添うこと
努力を称えるよりも、まずはその過程でどんな気持ちを抱いていたかに目を向けてみましょう。
- 「やってみたけど難しかったね」
- 「不安な中でも取り組もうとしてたね」
- 「今日はちょっと疲れていたのかもしれないね」
このような言葉が、子どもの心の“今”を認めることになります。
2. 結果や努力だけでなく「意図」や「工夫」を認める
たとえば、テストで思うような点数が取れなかったときも、
- 「ここまでよく工夫したね」
- 「やり方を変えてみたところ、いいチャレンジだったね」
- 「やってみようと考えたこと、それ自体がすごいよ」
このように、「どう取り組んだか」というプロセスに注目することで、結果に縛られない自己肯定感を育てることができます。
3. 「休むこと」「あきらめること」にも価値を認める
時には、頑張ることよりも「休む」「引く」「やめる」ことが必要な局面もあります。
これらは決して“逃げ”ではなく、自分の心と身体を守るための行動です。
- 「今日はここまででやめてみよう」
- 「また気持ちが整ったら挑戦しよう」
- 「今はやめていいと思うよ」
このような声かけが、子どもの中に「自分で選べる力」を育てます。
子どもにかけたい“頑張り以外”の言葉
子どもの心が疲れているときこそ、以下のような言葉が心に響きます。
- 「やってみようとしたこと自体、すばらしいよ」
- 「今日は疲れてるみたいだね。無理しなくていいよ」
- 「自分なりのペースでやってるね」
- 「うまくいかない日もあるよ」
こうした声かけは、子どもにとって“自分は認められている”という安心感を育みます。
それが結果的に、「またやってみよう」という本来の意欲につながるのです。
「頑張らなきゃいけない社会」ではなく「頑張らなくても大丈夫な関係性」を
今の子どもたちは、学校・習い事・家庭の中で、常に成果や成長を求められています。
その中で、「頑張らなきゃ価値がない」と感じてしまうと、心は休まる場所を失ってしまいます。
だからこそ、家庭や教育現場には“頑張らなくても安心できる空気”が必要です。
- 努力も大切。でも、努力だけじゃない。
- 成長も嬉しい。でも、立ち止まってもいい。
- 頑張るあなたも、休むあなたも、大切に思っている。
そんなメッセージを日々伝えることで、子どもたちは、自分をまるごと信じられる力を育てていくのです。
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