ある日、子どもがぽつりとこう言いました。
「どうして毎日学校に行かなきゃいけないの?」
この一言に、ドキッとした経験がある保護者は多いかもしれません。登校を渋るわけではなくても、日々の忙しさや疲れ、学校での人間関係などから、子どもはふと「意味」を考えることがあります。
この問いは、子どもが自分の成長や生き方に目を向けはじめている証。
そして、大人にとっても「当たり前」と思っていた日常を見つめ直すチャンスです。
本記事では、「なぜ学校に行くのか?」という問いにどう向き合い、子どもにどう伝えるかを考えていきます。
学校は「学力」だけを育てる場所ではない
まず大前提として、学校は「勉強を教える場」だというイメージが強いかもしれません。確かに教科学習は学校の重要な柱のひとつです。
しかし、学校は知識を詰め込むだけの場所ではありません。
学校という場所には、教科書には載っていない大切なことを学ぶ機会が数多く詰まっています。
- 集団の中での自分の役割や関わり方
- 意見の違う人とすれ違い、理解し合う経験
- がんばることの意味や、続けることの大切さ
- 喜び、悔しさ、葛藤、達成感といった感情の幅
子どもはこれらを、教室、休み時間、給食、掃除、行事など、日々の「暮らし」そのものの中から学んでいきます。
つまり学校とは、子どもが社会の一員として育つための「小さな社会」なのです。
「行く意味」は、目に見えるものだけでは測れない
子どもが「学校って意味あるの?」と感じる背景には、学校での苦手なことや悩みがあるかもしれません。たとえば――
- 勉強が難しい
- 友だちとの関係がうまくいかない
- 集団生活がしんどい
そうした子どもに、「勉強のため」「将来のため」とだけ説明しても、納得感は得られにくいものです。むしろ、「今つらいのに、未来のために我慢しろと言うの?」と、反発や不信感につながることもあります。
だからこそ大人は、「今の気持ちに寄り添いながら、それでも学校に行く意味を一緒に考える」ことが大切です。
学校での日々は、点数や成績で測れないたくさんの学びで構成されています。
例えば――
- 「イヤなことがあっても乗り越えられた」
- 「一緒に笑えた友だちができた」
- 「先生に認めてもらえて嬉しかった」
そうした経験は、子どもの心に「自分は大丈夫」「やっていける」という根拠のない自信を少しずつ育てていきます。
子どもに伝えたい「学校へ行く本当の理由」
では、子どもに「なぜ学校に行くの?」と聞かれたら、どう答えればよいのでしょうか。
答えはひとつではありませんが、以下のような考え方を言葉にして伝えると効果的です。
1. 「人と一緒に生きる練習をする場所なんだよ」
学校では、さまざまな個性を持った子と一緒に生活します。
気の合う子もいれば、合わない子もいます。意見がぶつかることもあるでしょう。
でもそれこそが、社会で生きていくための経験値になります。
家庭では体験できない「他者との距離感」「思い通りにいかない場面」「気持ちの伝え方」などを、小さなトラブルや喜びを通して学べるのが学校です。
2. 「知らなかったことを知ると、世界が広がるんだよ」
国語や算数、理科や社会などの教科は、単なる知識ではありません。
世界を知り、自分の興味を広げるきっかけになります。
学校で学ぶことで、自分の好きなことや得意なことが見えてくる。
「こんな世界があるんだ」と驚く体験は、将来の選択肢を増やす土台になります。
3. 「自分のことを少しずつわかっていく場所なんだよ」
勉強が得意な子、運動が好きな子、みんなを笑わせるのが上手な子。
学校は、いろいろな力をもつ子どもたちが集まる場所です。
そんな中で、「自分は何が好きか」「どんなことに向いているか」「どんなときに楽しいと感じるか」など、“自分自身”を知る手がかりがたくさんあります。
学校は、子どもにとって「自分らしさを探し続ける場」でもあるのです。
不登校の子どもへの配慮:通うことだけが目的ではない
近年、さまざまな理由で学校に通いづらい子どもも増えています。
このような場合に、無理に「学校は行くべき」と押しつけることは逆効果です。
大切なのは、「学校に行くこと」ではなく、「学び続けること」や「人との関係を築いていくこと」を応援する姿勢です。
家庭やフリースクールなど、環境が変わっても「子どもが自分らしく育つ土台をつくる」ことはできます。
だからこそ、学校の存在を「通わなければならない場所」ではなく、子どもにとって「安心して自分を育てられる場所」へと変えていく視点が、今の社会には求められています。
まとめ:「学校は、自分を広げる旅のスタート地点」
子どもが「なぜ学校に行くの?」と尋ねるとき、それは「自分が生きる意味」や「社会との関わり方」を考え始めているサインです。
そのとき大人は――
- 学校は「小さな社会」であり、人と生きる練習の場
- 学びによって、世界を広げ、自分を知ることができる
- 行くこと自体よりも、「何を感じ、どう育つか」が大切
こうした視点を、子どもの理解に合わせて丁寧に伝えていくことが大切です。
学校はゴールではありません。
子どもが自分らしく、自由に未来を選んでいくための出発点です。
そして、どんな形であっても「学ぶこと」「人と関わること」「自分を知ること」が続いていれば、それは立派な“学校の意義”を果たしていると言えるのです。
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