言葉にしなくても、私たちは多くを伝え合っています。
まなざし、身振り、声のトーン、距離感……それらすべてが非言語コミュニケーションです。
特に子どもとの関わりでは、大人の表情や態度、ちょっとした“間”が子どもに強い印象を与えることがあります。
本記事では、非言語コミュニケーションにおける注意点について、心理学的な視点を交えながら具体的に解説します。
教育現場や家庭で子どもに関わる方々に、ぜひ参考にしていただきたい内容です。
なぜ非言語コミュニケーションが重要なのか?
私たちが相手に与える印象のうち、実は言語情報は7%程度にすぎません。
アルバート・メラビアンの研究によると、
- 言語(話の内容):7%
- 聴覚情報(声の調子や速さ):38%
- 視覚情報(表情や姿勢):55%
このように、93%が非言語情報によって伝わっているのです。
つまり、「何を言ったか」よりも、「どう言ったか」「どんな表情だったか」が相手に与える影響ははるかに大きいということです。
特に言語的な理解が未熟な子どもにとっては、非言語の影響力がさらに強くなることを忘れてはいけません。
子どもとの関係で気をつけたい非言語のポイント
子どもと関わるうえで、大人が特に意識しておくべき非言語の注意点を4つご紹介します。
1. 表情の「ズレ」に注意する
言葉では「いいよ」と言っているのに、眉間にしわを寄せていたらどうでしょう?
子どもは「本当は怒ってる?」と混乱してしまいます。
特に感情を隠そうとする大人にありがちなのが、この「言葉と表情の不一致」です。
- 怒っていないつもりでも、目つきが鋭くなる
- 心配しているのに、顔が無表情になってしまう
- 「大丈夫」と言いながらため息をつく
こうした“ちぐはぐ”なメッセージは、子どもにとって安心できないコミュニケーションになります。
できるだけ表情は言葉と一致させること。そして、不安や疲れで表情が出せないときは、正直に「今日はちょっと疲れてるんだ」と伝えることが大切です。
2. 視線は「注目」と「圧力」の両方になる
目を見て話すことは、信頼関係を築くうえで効果的です。
しかし、子どもにとっての視線は時にプレッシャーになることもあります。
- 強くにらむような目つき
- 長時間見つめ続ける
- 無理に「目を見て話しなさい」と言う
これらはかえって、子どもを委縮させる原因になります。
特に繊細な子、HSP傾向のある子、発達特性のある子にとっては、“目を見て話す”こと自体が困難な場合もあるのです。
相手の目を見ることよりも、「安心して話せる空気」を作ることを優先しましょう。
視線はあくまで“会話のアクセント”として使い、「時々目を合わせる」「見守るような視線を送る」くらいがちょうど良いのです。
3. 声のトーンと抑揚が感情を伝える
同じ言葉でも、声の高さやスピード、間の取り方によって伝わり方は大きく変わります。
たとえば、「がんばったね」と言うにしても、
- 柔らかくゆっくり → 「認めてもらえた」と安心感
- 早口で棒読み → 「適当に流された」と感じる
- 小さな声 → 「関心がなさそう」と不信感
このように、声の質感がそのまま感情のメッセージになります。
特に子どもが不安なときは、落ち着いたトーン、やや低めの声、ゆっくりしたテンポが効果的です。
逆に興味を引きたいときは、少し高めの声でテンポよく話すと注目を集めやすくなります。
4. 距離と姿勢は「安心感」の土台
子どもとの物理的な距離や姿勢にも、心理的な意味があります。
- いきなり近づきすぎると「威圧感」になる
- 子どもが座っているのに大人が立っていると「見下ろされる」感覚になる
- 距離を取りすぎると「無関心」に感じられる
大切なのは、子どもの目線に合わせること。
しゃがんで話す、少し横に座る、子どものペースに合わせて近づく……
そうした姿勢は、「あなたのことを大切に思っているよ」という無言のメッセージになります。
非言語のズレが招く「誤解」と「関係のすれ違い」
非言語コミュニケーションは、意図せず相手に誤解を与えてしまうリスクもあります。
たとえば、
- 「怒ってない」と言いながら不機嫌そうな態度
- 「大丈夫」と言いつつ無表情
- 「信じてる」と言いながら監視するような目線
これらの言葉と態度の矛盾は、子どもを混乱させ、「信じていいのか分からない」「本音が分からない」と不信感を抱かせてしまいます。
つまり、非言語は相手との信頼関係を築く上で“矛盾しない一貫性”が必要なのです。
非言語に自覚的になるためのセルフチェック
非言語コミュニケーションを改善するには、まず自分の「無意識の癖」を知ることが第一歩です。
以下のような質問で、日々の振る舞いをチェックしてみましょう。
- 子どもに話しかけるとき、表情は柔らかいか?
- 自分の声のトーンや話す速さは、落ち着いているか?
- 視線を送るとき、プレッシャーになっていないか?
- 子どもが安心できる距離や姿勢をとっているか?
こうした自己観察を習慣にすることで、自然と非言語の伝え方も整ってきます。
まとめ:非言語は「目に見えない信頼の橋」
非言語コミュニケーションは、言葉よりも多くを伝えています。
それは相手への関心・信頼・愛情の表現であり、また同時に緊張・怒り・拒絶のメッセージにもなり得ます。
特に子どもは、大人の言葉ではなく「空気」「態度」を敏感に読み取っています。
だからこそ、表情・声・姿勢・距離といった“目に見えない部分”を丁寧に整えることが、子どもとの信頼関係を深めるカギになります。
非言語は、まさに言葉を超えた信頼の橋。
その橋を、毎日の関わりの中でしっかりと築いていきましょう。
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