子どもたちが何かを学ぶとき、「がんばったね」「よくできたね」という声かけは欠かせません。しかし、ただ褒めるだけでは学びは深まりません。成長を促すには、「今の自分」と「目指す姿」とのギャップに気づかせ、その差をどう埋めるかを一緒に考える視点が必要です。
この記事では、「ポジティブフィードバック」と「ギャップフィードバック」という2つのフィードバック法を生かした効果的な指導について、教育現場や家庭学習での具体的な実践例とともに解説します。
フィードバックは“評価”ではなく“支援”
まず確認しておきたいのは、フィードバックの本質は評価や指摘ではなく、学習や行動の改善を支援することです。
「ここがダメ」と伝えるだけでは、子どもの意欲は低下しがちです。逆に「これができている」「次はこうするともっと良くなる」と伝えることで、前向きな改善意欲を引き出せます。
そのために有効なのが、以下の2種類のフィードバックです。
1. ポジティブフィードバック(肯定的な手ごたえの共有)
子どもの「できたこと」「工夫した点」「前回より成長した部分」など、すでに達成できていることを具体的に伝える方法です。
- 「昨日より漢字の形が正確になったね」
- 「声の大きさが聞き取りやすくなっていたよ」
- 「前は時間を忘れてたけど、今日は時計を見て行動していたね」
このように、行動の結果やプロセスを具体的に認めることで、子どもは「自分の努力が伝わった」と感じ、自信と自己効力感を得られます。
2. ギャップフィードバック(目標とのズレを示す)
今の状態と、理想・目標との間にあるギャップを「どう埋めるか」を共に考えるためのフィードバックです。
- 「5問中3問は正解。あと2問は、どこで間違えたかな?」
- 「この作文、とても丁寧に書けているよ。もう少し読者を意識して書けると、さらに伝わると思う」
- 「発表の準備、しっかりしてたね。次は、聴いている人を見ながら話してみようか」
否定ではなく成長への視点で伝えることで、子どもは「次のステップ」が明確になり、意欲を維持できます。
ポジティブとギャップ、両方あることで「前進」が生まれる
どちらか一方だけでは指導は不十分です。
ポジティブフィードバックだけでは、成長の伸びしろに気づきにくく、
ギャップフィードバックだけでは、自己肯定感を損ないやすいのです。
この2つをバランスよく使うことで、以下のような学習支援が可能になります。
- 「できていること」で安心感を得て
- 「まだできていないこと」に挑戦する気持ちを育てる
つまり、“今の自分”を受け止めながら、“なりたい自分”に近づく支援ができるのです。
フィードバックが活きる3つの原則
どんなに言葉が良くても、タイミングや伝え方を間違えるとフィードバックの効果は半減します。子どもに響くフィードバックには、以下の3つの原則があります。
① 具体的に伝える
「すごいね!」「よかったよ!」だけでは、何がよかったのかが伝わりません。
❌「えらいね」 →
✅「計算の途中式、全部丁寧に書いてあってわかりやすかったよ」
具体性があることで、子どもは自分の行動を客観的に見直せます。
② タイムリーに伝える
行動直後に伝えることで、子ども自身が「どの場面が評価されたのか」に気づきやすくなります。時間が経ってからでは、記憶も印象も薄れてしまいます。
③ 次につながる提案を含める
単なる「結果の評価」ではなく、「今後にどう活かせるか」の視点があると、子どもは前向きに改善に取り組みやすくなります。
「このやり方、とても工夫できていたよ。次は、友達と相談しながらやってみると、もっとアイデアが広がるかもね」
家庭でもできる!ポジティブ×ギャップの会話例
学習支援は家庭の中でも可能です。以下のような会話例を参考にしてみてください。
例1:宿題に取り組んだあと
「この漢字、すごく丁寧に書けてるね(ポジティブ)」
「このへん、少し書き順が気になるところがあるけど、どうだった?(ギャップ)」
「次は書き順を意識して、もう一度練習してみようか」
例2:日記を見たとき
「今日は、すごく気持ちがよく伝わる表現が使えてたよ(ポジティブ)」
「でも、最後のまとめがちょっと急だったかも(ギャップ)」
「読んでる人に伝えたいことを、最後にもう一文加えるとさらによくなるね」
このように、「認める」と「改善を促す」をセットにすることで、子ども自身が自ら考え、成長していく姿勢が育ちます。
まとめ:子どもの“今”と“未来”の間に橋をかける
フィードバックは、子どもを評価するためのものではなく、学びの歩みを支えるコミュニケーションです。
- ポジティブフィードバックで今の良さに光を当て、
- ギャップフィードバックで次のステップを示す
この2つを組み合わせることで、子どもは安心と挑戦をバランスよく感じながら、学びに向かっていけるのです。
ぜひ、日々の関わりの中で「できたこと+伸びしろ」の両面に目を向け、未来への橋をかけるフィードバックを意識してみてください。
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