いま、教育現場や保護者の間で共通して重視されている力があります。
それが、「自分の考えをはっきりと言える力」です。
AIの進化、国際社会の複雑化、価値観の多様化。これらの変化が進む中で、「受け身ではなく、自分の意見を持ち、対話できる力」が必要不可欠となってきました。
しかし実際には、
「うちの子、自分の意見をなかなか言えなくて…」
「空気を読みすぎて、いつも周りに合わせてしまう」
そんな悩みを抱える保護者が少なくありません。
この記事では、教育心理や言語発達の観点から、「自分の考えを言える力」をどう育てていくかを具体的に解説します。親として、指導者として、できることを一緒に考えていきましょう。
なぜ子どもは「自分の考えを言えない」のか?
子どもが意見を言わない理由には、年齢や性格だけでなく、周囲の関わり方や環境要因が大きく関わっています。主な原因としては、次のようなものが挙げられます。
- 否定される経験が多い:「そんな考えじゃダメ」「どうしてそう思うの?」と返されると、自信を失ってしまう
- 正解主義の文化:「間違えたら恥ずかしい」という恐れが強くなる
- 大人が先回りして結論を言ってしまう:考える前に「こうしなさい」と言われることで、発言の機会が奪われる
- 感情と言語が結びついていない:考えや気持ちを言語化する経験が少なく、言葉にできない
このような背景から、子どもたちは「黙っていた方が安全」と感じるようになってしまうのです。
つまり、「考えがない」のではなく、「言っていいと思えていない」ケースが多いのです。
自分の考えを伝える力は「思考×言語」で育つ
自分の考えを言えるようになるためには、2つの力の掛け算が必要です。
- 自分の頭で考える力(思考力)
- それを言葉で表す力(言語力)
この2つがバランスよく育ってこそ、「言いたいことを整理し、相手に伝える」ことが可能になります。
具体的には、以下のようなアプローチが有効です。
- 選択肢を与えて考えさせる:「どっちがいい?」ではなく「どうしてそう思ったの?」まで聞くことで、思考が深まる
- 問いかけを工夫する:「○○ちゃんはどう思う?」と本人の立場に焦点を当てる
- 日常の中で“説明する場面”をつくる:「今日のおすすめの本、なんでそれを選んだの?」など、理由を聞く習慣を持つ
こうした経験の積み重ねが、子どもに「考えて話す力」を育てていきます。
「意見を言うこと=いいこと」という価値観を育てる
子どもが自信を持って自分の意見を言えるようになるには、「意見を言っていいんだ」「自分の考えが大切なんだ」と感じられる心理的安全性が不可欠です。
そのために、大人が心がけたい関わり方は以下のとおりです。
- 意見を否定せず、一度受け止める:「そう思ったんだね」と、まずは価値を認める
- 異なる意見があることを自然に伝える:「○○さんはこう考えているんだって」と、多様な考え方があることを共有する
- 意見を言ったときはしっかり反応する:「面白いね、それって○○ってこと?」と、興味を持って聴く姿勢を見せる
こうした環境があることで、子どもは「話してもいい」「伝えてもいい」と感じるようになります。
「自分の考えを言える子」は他者との関係力も高めていく
意見を言えるようになることは、単に発言力を高めることではありません。
それは、他者と建設的に関わる力=コミュニケーション力につながります。
たとえば、次のような変化が見られるようになります。
- 自分の気持ちや困りごとを言語化して、周囲に伝えられる
- 相手の意見に耳を傾け、違いを受け入れる姿勢が育つ
- 話し合いや交渉の場面でも、感情に流されずにやりとりできる
このように、「自分の考えを言える力」は、単なる“スピーチ力”ではなく、対話を通じて社会に関わるための基本スキルとなるのです。
まとめ:親子の日常が「意見を言える力」の土台になる
自分の考えを言える子どもを育てるには、特別な指導よりも、日常の会話・やりとり・雰囲気づくりが最も効果的です。
- 「あなたはどう思う?」と問いかける習慣
- 「いいね!」と受け止める姿勢
- 「伝えてくれてうれしい」と感謝する気持ち
こうした親の対応が、子どもの内側にある思考の芽を育て、自信へと変えていきます。
これからの時代に必要なのは、「正解を言える子」ではなく、「自分の意見を持ち、他者と対話できる子」。
そのために、まずは今日から――「自分の考えを言うこと」に、価値と温かさを与える環境をつくってみませんか?
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