私たちは、子どもに「考える力を育ててほしい」と願います。
ですが、日常の中でつい「これはこう」「あれは違う」と、物事を分類しすぎてしまっていないでしょうか?
今、あらためて注目したいのが、「一緒くたに考える」という姿勢。
一見、曖昧で未整理なように思えるこの考え方こそ、本質を見抜く直感や、多角的に物事を見る力を育てる土台となります。
この記事では、「一緒くたに考える」ことの教育的意義を、子どもの発達と学びの視点から解説します。
一緒くたに考えるとはどういうことか
「一緒くたにする」と聞くと、「ごちゃ混ぜにする」「きちんと分けない」といった否定的なイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、思考の初期段階においては、物事を分けすぎず、まるごと捉えるという姿勢がとても大切です。
たとえば:
- 「嬉しい」と「泣く」が同時に存在する
- 「好き」と「嫌い」が共存する
- 勝って嬉しいけれど、相手が負けて悲しい気持ちもある
こうした一見矛盾する感情や要素を、ひとつの中に抱えることができる思考力が、「一緒くたに考える力」と言えます。
これは、幼い子どもが最初に持っている自然な感覚であり、決して劣ったものではありません。
早すぎる分類がもたらす弊害
教育現場では、知識や技能の習得のために「分類」「分析」「整理」といった思考を教えることが求められます。
もちろん、これは重要な学びです。
しかし、これが行き過ぎると、子どもは以下のような思考に陥りがちです:
- 〇か✕かで判断しがち
- 正解がないと不安になる
- 曖昧さに耐えられない
- 異なる立場を受け入れられない
つまり、複雑さを受け止める心の余白が失われていくのです。
思考の柔軟性や、対話における寛容さを育てるためには、「整理されていない世界をそのまま受け入れる経験」が必要です。
一緒くたに考えることの3つのメリット
1. 感情や経験を「まるごと」味わえるようになる
子どもは、成長の中でさまざまな感情を経験します。
「楽しいのに、泣いてしまう」
「怒っているけど、寂しい」
「褒められて嬉しいけど、照れくさい」
このような矛盾した感情を否定せず、全部抱える力は、自己理解を深め、感情調整力の土台となります。
一緒くたに考えることで、「自分は何を感じているのか」「なぜそう思うのか」をじっくり探る時間が生まれます。
2. 想像力と共感力が育つ
相手の立場や状況を理解するためには、「違う考えや価値観」をそのまま受け止める必要があります。
- 「その人にはそう見えるんだ」
- 「私とは違うけれど、わかる気がする」
- 「正しいかどうかより、まず聴いてみよう」
こうした共感の姿勢は、分けることではなく、一緒くたにして考えてみる体験から生まれます。
学校生活や友人関係の中でのトラブル対応にも、非常に役立つ力です。
3. 創造的な発想が生まれる
アイデアを生み出す場面では、「関係なさそうなことを結びつける力」が問われます。
たとえば:
- 科学とアートを融合したアイデア
- 昔話と現代の問題を結びつけた探究
- 感情と数値を関連づけた表現
これは、「AとBはまったく違う」と切り分けてしまっては生まれません。
一緒くたにして考えるからこそ、新しい見方やユニークな切り口が生まれてくるのです。
一緒くたの思考を支える関わり方
では、子どもの「一緒くたに考える力」を育てるには、どのような関わりが効果的でしょうか?
1. すぐに結論づけない
子どもが話しているとき、「つまりこういうことだね」と大人が整理しすぎないようにします。
たとえば:
子ども:「〇〇ちゃんと遊んで楽しかったけど、ちょっと嫌だった…」
大人:「え?じゃあ楽しかったの?嫌だったの?」
このような反応ではなく、「その気持ち、どっちもあるんだね」と、感情をまるごと受け止めるような応答が理想です。
2. 答えのない問いを一緒に考える
「なぜ空は青いの?」「どうして人はケンカするの?」といった哲学的で曖昧な問いに、大人も答えを急がず、考える姿勢を見せましょう。
答えのない問いに向き合うことは、一緒くたの思考が活かされる最高の教材になります。
3. 創造活動の時間を持つ
絵を描く、物語を作る、空想の世界で遊ぶ──
こうした活動では、現実とフィクション、感情と論理、過去と未来が混ざり合います。
これはまさに、一緒くたな発想の宝庫。自由な創造は、思考の境界線を曖昧にしてくれる最高の時間です。
まとめ:混ざり合いの中にこそ、学びの本質がある
「一緒くたに考えること」は、未熟な思考の証ではなく、
本質を見極め、他者と生き、未来をつくるために欠かせない認知の力です。
- 感情を整理しきれなくていい
- 答えが出なくてもいい
- 複数の意味が共存していていい
そのような思考の広がりを、私たち大人が肯定し支えていくことが、
子どもたちの知的好奇心や社会性、創造性を大きく伸ばしていくのです。
「整理しないこと」もまた、考えること。
そんな言葉を胸に、子どもの話を一緒くたに聞いてみることから始めてみませんか?
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