夕方5時。公園から帰ってきたお子さんが、ランドセルを放り出してソファにどさっと座ります。
「宿題やらなきゃ……」と言いながら、そのまま10分ぼーっとして、やっと机に向かったと思ったら「消しゴムどこだっけ」とゴソゴソ。気づけば6時半。まだ漢字ドリルが半分も終わっていない。
「もう時間ないじゃん!」とお子さんがイライラし、「だから早くやりなさいって言ったでしょ!」とこちらもイライラ。こんな光景、わが家だけじゃないはず……と思っている方、その通りです。まったく珍しい話ではありません。
ただ、ここでひとつ考えてみたいことがあります。
この「時間がない問題」、本当に”時間”が足りないのでしょうか。それとも、”時間の使い方”の問題なのでしょうか。
答えは多くの場合、後者です。小学生の放課後は、大人が思っているよりずっとたくさんの時間があります。でもその時間が「なんとなく」で溶けてしまっているだけ。
今回は、お子さんが遊びも勉強も楽しめるようになる”時間の使い方のコツ”を5つ、具体的にお伝えしていきます。
コツ① まず「何をやるか」を3つだけ紙に書く
机に向かう前の1分間で、今日やることを3つだけ紙に書いてみる。たったこれだけで、勉強の進み方がかなり変わります。
- 漢字ドリル1ページ
- 算数プリント表だけ
- 音読1回
なぜ書くといいのか。人間の脳は「次に何をすればいいかわからない」状態がいちばん疲れるからです。大人でも、仕事が山積みのとき「何から手をつけよう……」と考えているだけで30分過ぎていた、なんてことがありますよね。子どもならなおさらです。
やることが目の前に書いてあると、「とりあえず1個目をやろう」と体が動き出しやすくなります。そして1つ終わるごとに線で消していく。この「消す快感」が、次の1つに向かうエネルギーになるんです。
ポイントは「3つまで」に絞ること。5つも6つも書くと、それだけで気持ちが重くなってしまいます。
コツ② 「25分だけ」に区切って、脳をだます
「1時間勉強しよう」と言われると、大人でもうんざりしますよね。でも「25分だけやってみよう」ならどうでしょう。ちょっとだけ気が軽くなりませんか。
この「25分集中+5分休憩」のリズム、ビジネスの世界でも広く使われている時間管理の方法です。キッチンタイマーやスマホのタイマーで25分をセットして、鳴ったら何が途中でもいったん手を止めて5分休む。休んだらまた25分。
あるご家庭では、小学3年生の男の子がこの方法を始めてから「タイマーが鳴る前に終わらせたい!」とゲーム感覚で取り組むようになったそうです。結果的に、それまで1時間かかっていた宿題が40分で終わるようになったとか。
25分が長すぎるお子さんには、15分でも10分でも構いません。大事なのは「終わりの時間が見えている」こと。ゴールが見えているマラソンと、いつ終わるかわからないマラソンでは、走る気力がまったく違いますよね。
コツ③ 机の上を「今使うもの」だけにする
お子さんの勉強机、今どんな状態ですか?
漫画が積んであったり、ガチャガチャの景品が転がっていたり、先週のプリントが山になっていたり……。心当たりがあるとしたら、それは集中できない原因のひとつかもしれません。
人間の脳は、視界に入るものすべてを無意識に処理しています。机の上に漫画があれば「あの続き読みたいな」、おもちゃがあれば「あとで遊ぼう」と、脳が勝手に”よそ見”を始めてしまうんです。
対策はシンプル。勉強を始める前に、今使う教科書・ノート・筆記用具だけを机に出して、それ以外は全部どけてしまう。段ボール箱1つ用意して、「一時避難ボックス」としてぽいぽい放り込むだけでもOKです。
ある小学校の先生は「机の上がきれいな子は、だいたい授業中の集中力も高い」と話していました。机の状態と頭の中は、不思議とリンクしているんですね。
コツ④ 「予習5分」が授業の理解度を変える
「予習」と聞くと、なんだか大変そうに感じるかもしれません。でもここで言う予習は、とても簡単なもの。教科書の次の授業で使うページをぱらっとめくって、見出しと図を見る。それだけです。所要時間は5分もかかりません。
たとえば、算数で「分数のかけ算」を習う前に、教科書のそのページをぱらっと見ておく。細かい解き方はわからなくていいんです。「ああ、明日はこんな感じのことをやるのか」とぼんやり知っているだけで、授業で先生の話を聞いたときの「わかる!」の度合いがぐんと変わります。
映画を観る前に予告編を見ておくのと似ています。予告編を見ていると、本編で「あ、これ予告に出てたやつだ」と気づく場面がありますよね。あの「つながった!」という感覚が、授業中にも起きるわけです。
逆に予習なしで授業に臨むのは、いきなり字幕なしの外国語映画を観るようなもの。内容についていけず、途中で眠くなってしまう……というのも無理はありません。
コツ⑤ 「覚えたこと」を誰かに話してみる
テスト前に教科書を何度も読んだのに、本番ではさっぱり思い出せなかった――こんな経験、ありませんか。
実は「読む」「見る」だけのインプットは、記憶への定着率がそれほど高くないことがわかっています。一方で、「人に説明する」というアウトプットをすると、定着率が格段に上がるという研究結果があります。
と言っても、難しいことはしなくて大丈夫です。夕食のときに「今日、理科で何やったの?」と聞いて、子どもに説明してもらう。それだけで立派なアウトプットになります。
「えっとね、磁石のN極とS極がくっつくんだけど、同じ極だと反発するの」。うまく言葉にできなくても構いません。説明しようとして「あれ、なんだっけ」と引っかかった部分こそ、復習すべきポイントだからです。
あるお母さんは「うちでは”先生ごっこ”と呼んでいて、子どもがホワイトボードの前に立って授業をしてくれるんです」と話してくれました。最初は照れていた子も、やっているうちにどんどん楽しくなって、今では「今日の授業やるよ!」と自分から始めるようになったそうです。
全部やらなくて大丈夫です
5つのコツを紹介しましたが、一度に全部やろうとすると、それこそ「時間がない!」になってしまいます。
まずはどれかひとつ、「これならうちの子にもできそう」と思えるものを選んでみてください。おすすめは、いちばん手軽なコツ①の「やることを3つ書く」です。今日の夕方、付箋1枚とペンがあればすぐに始められます。
小さな工夫がひとつうまくいくと、子どもは「あれ、今日はいつもより早く終わった」と気づきます。その「ちょっと得した感じ」が次の工夫を試すきっかけになり、少しずつ「自分なりの勉強のリズム」ができあがっていきます。
勉強の時間が短くなった分、思いきり外で遊べる。好きな本を読める。家族と笑って過ごせる。そんなふうに毎日がちょっとずつ変わっていったら、嬉しいですよね。
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