子どもが「なんかイヤ」「よくわからないけどモヤモヤする」と感じることは、成長の過程で頻繁に起こります。
その違和感や曖昧な感情に蓋をしてしまえば、やがて自分の気持ちがわからなくなったり、他人に合わせすぎて疲弊することにもつながりかねません。
この記事では、心の中にある“もやもや”を大切にし、それを自分で探っていける子どもを育てるための方法について、心理学や教育実践に基づいてご紹介します。
「もやもや」には意味がある
もやもやとは、明確な言葉にはできないけれど、心の奥で何かが引っかかっているような状態を指します。
これは不快な感情の一種かもしれませんが、決して「悪いこと」ではありません。
むしろ、「なんか変だな」「なんとなく納得いかない」などの違和感や曖昧な感情は、自己理解や価値観形成の出発点となります。
それを無視せず、自分で向き合い、言葉にしていくプロセスこそが、深い自己認識と自律性を育てる学びなのです。
「もやもや」に向き合える子の特徴
子どもが心のもやもやを探れるようになるには、次のような力が必要です。
- 自己対話の力(内省力)
- 安心して話せる環境
- 感情を言語化する語彙力
- 「わからないこと」に耐えられる力
- 自分の違和感に価値を見出せる視点
これらは自然に育つものではありません。日常の大人の関わり方によって、少しずつ育てていくことができます。
子どもが「もやもや」を探っていくための5つの関わり
1. もやもやを否定しない
子どもが「なんかイヤだった」「よくわかんないけど変な気分」と言ったとき、
大人が「そんなことで?」と一蹴したり、「気にしすぎよ」と話を終わらせてしまうと、子どもは「自分の感覚は間違っている」と思ってしまいます。
まずは、もやもやの存在そのものを大切に受け止める姿勢が必要です。
- 「そう感じたんだね」
- 「その気持ち、大事だよ」
- 「まだうまく言えなくても大丈夫」
このような言葉は、子どもが自分の気持ちと向き合う許可になります。
2. 一緒に「なぜだろう?」を探る
子ども自身が「なぜモヤモヤしたのか」理由を考える力は、最初からは育っていません。
そこで大人が探究型の問いかけをすることが効果的です。
- 「どのあたりで変な感じがした?」
- 「その時、体はどんなふうに感じた?」
- 「前にも似たようなことあったかな?」
これは、自己の感情と出来事を結びつける力を育てる問いです。
「わからない」状態を否定せず、少しずつ輪郭を描いていくように関わることで、もやもやの正体が明らかになってきます。
3. 言葉にできない思いは「描く」「動く」で表現する
低学年の子や語彙が少ない子には、感情を言葉にするのは難しいことです。
その場合は、非言語的な表現手段を活用してみましょう。
- 「もやもやの色を描いてみて」
- 「今の気分を音で表すならどんな感じ?」
- 「このブロックで今の気持ちを形にしてみる?」
こうしたアプローチは、子どもの内面をアウトプットする通路を開き、言葉での整理を助けます。
4. 答えを急がず「プロセス」を肯定する
もやもやを探るプロセスに正解はありません。
けれど大人はつい、「どうしてそう感じたの?」「こうすればよかったんじゃない?」と早く結論づけたくなるものです。
しかし、子どもが自分で感じ、考え、納得するまでの「問いの時間」こそが大切です。
- 「まだはっきりしなくても大丈夫」
- 「この気持ちは今のあなたにとって大事な手がかりかもしれないね」
そう伝えることで、子どもは安心して思考と感情の整理を続けることができます。
5. 大人自身が「もやもやを語る」背中を見せる
大人が完璧に正解を出して生きている姿ばかりを見せていると、子どもは「迷うことはいけないこと」と誤解しがちです。
ときには、大人自身のもやもやや葛藤を言葉にすることも効果的です。
- 「私もこの前、なんだか気持ちがザワザワしてね…」
- 「まだ答えは出てないけど、考え続けてるよ」
こうした姿は、“考え続けていい”という文化を家庭や教室に根づかせます。
「もやもや」を探ることは、成長と創造の源泉
実は、「もやもや」とは「問い」の始まりです。
そして「問いを持てる人」こそが、変化の時代を生き抜く力を持つといわれます。
もやもやは不快で不確かで、避けたくなる感情です。
けれどそこから逃げずに向き合える子どもは、自己理解力・共感力・問題解決力・創造性を自然と育てていきます。
まとめ:感情を感じる力が「人間らしさ」の土台になる
私たち大人が、子どものもやもやを「厄介なもの」ではなく「成長の手がかり」として受け止めること。
それが、子どもの「感じる力」「考える力」「生きる力」を大きく育てていきます。
子どもが「なぜこんな気持ちになるんだろう?」と、自分の心に向き合えるように。
そして、「このもやもや、大切にしてもいいんだ」と思えるように。
そんな関わりを、今日から少しずつ始めてみませんか?
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