冷蔵庫の中がパンパンに詰まっているのに、「今日のごはん、何にしよう……」と途方に暮れる。そんな経験、ありませんか?
食材が足りないのではなく、多すぎて選べない。実はこれ、今の子どもたちが「情報」に対して感じていることと、とてもよく似ています。
YouTube、SNS、学習アプリ、学校の授業、友だちとのおしゃべり。子どもたちのまわりには朝から晩まで情報があふれています。総務省の調査によると、10代のインターネット利用時間は1日平均4時間を超えるというデータもあります。大人でも処理しきれない量の情報を、まだ脳が発達途中の子どもたちが毎日浴びているわけです。
情報がたくさんあること自体は悪いことではありません。問題は、その中から「自分にとって本当に必要なもの」を選び取る力が育っていないまま、情報の波に放り込まれてしまうこと。
では、その「選び取る力」はどうやって育てればいいのか。ここでは、ある考え方をヒントにしながら、家庭でできる具体的な方法を一緒に考えていきます。
「知っている」と「自分のものになっている」は別物
たとえば、お子さんが社会の授業で「日本の食料自給率は約38%」と習ってきたとします。テストでは正解できるかもしれません。でも、スーパーで外国産と国産のお肉が並んでいるのを見て、「あ、だからこんなに外国のものが多いんだ」と自分の生活と結びつけて考えられるかどうかは、また別の話ですよね。
知識が「教科書の中のこと」で止まっている状態と、「自分の暮らしや考え方とつながっている」状態。この差は、とても大きい。
後者の状態――つまり、外から入ってきた情報を自分の経験や考えとつなげて「自分ごと」にすること。これが今回お伝えしたい「学びを自分のものにする力」です。
この力があると、情報に振り回されるのではなく、自分に必要なものを選んで、自分なりの考えを組み立てられるようになります。逆にこの力が育っていないと、情報をただ浴び続けるだけになって、何を信じていいかわからない、何がしたいかもわからない、という状態に陥りやすくなります。
子どもが「自分ごと化」できない3つの壁
「うちの子、ぼーっとスマホを見ているだけで、何も考えていないみたい」。そう感じることがあるとしたら、こんな壁が立ちはだかっているのかもしれません。
壁① 情報が多すぎて、おなかいっぱいになっている
食べ放題のバイキングで最初に取りすぎて、途中から何を食べているかわからなくなる――あの感覚に近いです。次から次へと流れてくる動画や記事に触れ続けていると、脳が「もう処理したくない」モードに入ってしまいます。新しいことに興味を持つエネルギーが残っていないんですね。
壁② 「正しい情報」と「そうでない情報」の見分けがつかない
大人でも難しいことですが、ネット上には正確な情報も不正確な情報も同じ画面に並んでいます。見た目がきれいなサイトだから正しいとは限らないし、再生回数が多い動画が事実を伝えているとも限らない。この「見分ける目」がまだ育っていない段階で情報の海に放り込まれるのは、泳ぎ方を知らないままプールに入るようなものです。
壁③ 自分の意見を持つ経験が少ない
「あなたはどう思う?」と聞かれても、「えっ……別に」と返ってくる。それは考えていないのではなく、自分の考えを言葉にする練習が足りていないだけかもしれません。日本の学校教育は長い間「正解をすばやく答える」ことが求められる場面が多かったので、「自分なりの答え」を組み立てる経験が不足しがちです。
家庭でできる5つの習慣
壁がわかったところで、それを少しずつ崩していくための方法を5つ紹介します。どれも今日からできるものばかりです。
習慣① 「これ本当かな?」を一緒に調べてみる
子どもが「ねえ、○○って知ってる?YouTubeで見たんだけど」と言ってきたとき。「へえ、そうなんだ」で終わらせるのではなく、「面白いね。他のところにも同じことが書いてあるか調べてみようか」とひと声かけてみる。
一緒にスマホやパソコンで検索して、「こっちのサイトにはこう書いてあるね」「あれ、ちょっと違うことが書いてある」と発見するプロセスそのものが、情報を「そのまま信じる」から「確かめてから受け取る」への切り替えスイッチになります。
堅苦しくやる必要はありません。「犯人探しゲーム」みたいな感覚で、親子で楽しめたらベストです。
習慣② 食卓で「今日知ったこと」を話す時間をつくる
夕食の5分だけでもいいので、「今日いちばんへえ~と思ったこと」を家族で一つずつ出し合ってみてください。
子どもが「給食のカレーにりんごが入ってた」と言ったら、「なんでカレーにりんごを入れるんだろうね?」と広げてみる。「甘くなるから?」「お肉がやわらかくなるんだって!」と、知識が対話を通じて「自分の言葉」に変わっていく瞬間が生まれます。
誰かに話すことで、ぼんやりしていた情報が輪郭を持つ。これは大人でも同じですよね。会議で聞いた話を同僚に説明しようとしたら、「あれ、自分もちゃんとわかっていなかったな」と気づく、あの感覚です。
習慣③ 「好き」を深掘りする時間を大事にする
虫が好き、電車が好き、お菓子作りが好き。子どもの「好き」が何であれ、それを「もっと知りたい」に変えてあげる環境を整えるだけで十分です。
虫好きの子には昆虫図鑑を1冊、手の届く場所に。電車好きの子には路線図や時刻表を。お菓子作りが好きな子には「この材料を半分にしたら何グラムになる?」と算数をさりげなく絡める。
ある家庭では、恐竜好きの6歳の男の子が、図鑑で読んだ恐竜の名前からカタカナを覚え、体長の数字から「メートル」の概念を理解し、地層の話から「何万年前」という時間のスケールに興味を持つようになったそうです。「好き」は最強の入り口で、そこから枝分かれするように知識が広がっていくんですね。
習慣④ 「つくる・表現する」機会を増やす
情報を受け取るだけでなく、自分の側から何かを発信する体験があると、学びの質がまるで変わります。
- 工作で好きなキャラクターを再現してみる
- 絵日記に今日の出来事を一コマ漫画で描く
- 料理のレシピを自分なりにアレンジして家族にふるまう
- 読んだ本の感想を3行だけノートに書く
上手・下手は関係ありません。「自分の頭の中にあるものを、外に出す」という行為そのものが、情報を受け身で消費する状態から抜け出す練習になります。
習慣⑤ 「わからない」「失敗した」を歓迎する空気をつくる
「自分で考える力」は、正解を出す練習ではなく、間違える経験から育ちます。
子どもが「調べたけど、よくわからなかった」と言ったとき、「何がわからなかったの?」と聞いてあげる。「実験してみたけど失敗した」と言ったら、「おお、何が起きたの?」と興味を示す。
「わからない」と言えること自体が、実はとても大きな力です。それは「自分が今どこにいるか」を把握できているということだから。ゴールまでの道がわからなくても、現在地さえわかっていれば、次の一歩は踏み出せます。
「自分で選べる子」は、ゆっくり育つ
5つの習慣を紹介しましたが、全部を同時にやろうとしなくて大丈夫です。来週の月曜日、夕食のときに「今日いちばんびっくりしたこと、何だった?」とひと言聞いてみる。それだけで十分な一歩です。
情報があふれる時代に必要なのは、情報を遮断することではなく、その中から自分に合うものを見つけて、自分なりに咀嚼して、自分の一部にしていく力。この力は、テストの点数のように短期間で結果が見えるものではありません。
でも、半年後、1年後にふと気づくはずです。ニュースを見て「これってどういうこと?」と自分から聞いてくるようになった。本屋で自分から棚の前に立ち止まるようになった。「私はこう思うんだけど」と食卓で意見を言うようになった。
そんな小さな変化のひとつひとつが、お子さんが「自分で情報を選べる人」になっていく確かな証です。
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note:https://note.com/kidsla_jp

