「また失敗した…」
「やりたくない!」
「もう嫌だ!」
子どもがネガティブな気持ちにとらわれてしまうと、その場から動けなくなることがあります。保護者としても「なんとか前向きにしてあげたい」と願う場面です。
しかし、強引な励ましや、理屈で説得しようとすると逆効果になることも…。
実は、気持ちの切り替えには“段階”と“働きかけの工夫”が必要です。
この記事では、教育心理学の知見をもとに、子どもの気持ちをうまく切り替えるための対応法をお伝えします。
感情と上手につきあいながら、回復力や自己調整力を育てるヒントとして、ぜひご活用ください。
なぜ子どもは気持ちの切り替えが苦手なのか?
まず知っておきたいのは、子どもの脳は感情を調整する力が未発達だということです。とくに幼児〜小学生では、次のような特性があります。
- 前頭前野(自己制御の中枢)が発達途中
- 「今、目の前の感情」に支配されやすい
- 自分の気持ちを言語化して整理するのが難しい
- 「気分」と「行動」を切り離して考える力が弱い
つまり、子どもが気持ちを切り替えられないのは、意志の弱さではなく発達的な段階の問題なのです。
この特性を理解した上で、大人が適切なサポートをすることが、子どもの情緒的な自立につながっていきます。
気持ちを切り替えるための5つのステップ
ここからは、具体的にどのように気持ちを切り替えさせればよいのか、5つの段階に分けて紹介します。
1. 否定せず、まず共感する
子どもが怒ったり泣いたりしているとき、「そんなこと気にしないで」「早く忘れなさい」と言ってしまいがちです。
でも、感情を押さえつけられると、子どもはより頑なになってしまいます。
まずはそのまま受け止めることが大切です。
- 「くやしかったんだね」
- 「そんなふうに思ったんだ」
- 「それは悲しかったよね」
共感的な言葉をかけることで、子どもは「理解されている」という安心感を得ます。これが切り替えへの第一歩になります。
2. 気持ちを“言葉”にするサポートをする
子どもが落ち着いてきたら、「いま、どんな気持ち?」と静かに尋ねてみましょう。
まだ言葉にできない年齢であれば、大人が代弁する形でも構いません。
- 「〇〇がうまくいかなくて、自分がダメだって思ったのかな?」
- 「怒ってたけど、実は悲しかったのかもしれないね」
感情に名前をつけることで、心の整理が始まります。
これは心理的な“手放し”の第一歩でもあり、自己理解にもつながります。
3. 「気持ちの出口」を一緒に探す
気分を切り替えるには、感情を外に出す手段=“出口”が必要です。
たとえば:
- 思いっきり泣く・声に出して気持ちを言う
- 絵に描く、文字にする
- 外に出て体を動かす
- 好きな音楽を聴く
- 水や光、風などの感覚を取り入れる
子ども自身が「気持ちの整理に役立つ方法」を見つけていくことも大切です。
「悲しくなったら、〇〇をすると楽になるかも」という引き出しを一緒に増やしていきましょう。
4. “考え方”の視点をゆるやかに変える
ある程度落ち着いてきたら、気持ちと出来事を少し距離をとって見直すサポートをしてみましょう。
- 「あのときは、どうしてあんな気持ちになったんだろう?」
- 「もしかしたら別の理由があったかもしれないね」
- 「じゃあ次は、どうしてみようか?」
このように、思考を一方向から多方向へ切り替える働きかけが、認知の柔軟性を育てます。
「こうじゃなきゃダメ」ではなく、「いろんな見方がある」と気づけると、気持ちも切り替えやすくなります。
5. 小さな成功体験へつなげる
最後に大切なのは、「切り替えられた」自分を子ども自身が実感することです。
- 「さっきはすごく怒ってたけど、最後まで話を聞けたね」
- 「悲しい気持ちを言葉にできたの、すごいね」
- 「そのあと気持ちを落ち着けて行動できたの、かっこよかったよ」
行動ではなく“気持ちの変化”を認めることが、子どもの内面の自己効力感を育みます。
気持ちを切り替えるたびに、心が少しずつ柔軟になっていきます。
NG対応:子どもの気持ちを逆なでする言葉とは?
どんなに意図が良くても、以下のような対応は、子どもをかえって頑なにしてしまうことがあります。
- 「そんなことで泣かないの」
- 「切り替えが早い子の方がかっこいいよ」
- 「あなたのためを思って言ってるんだよ」
- 「今すぐに気持ちを変えなさい」
これらは、子どもの感情を否定し、「自分は受け入れてもらえていない」と感じさせる要因になります。
気持ちの切り替えには、“急がず、責めず、伴走する姿勢”が何よりも大切です。
まとめ:感情の切り替え力は、人生をしなやかに生きる力
子どもにとって「気持ちを切り替える」ことは、大人が思う以上に高度なスキルです。
それは、情緒の調整、自己理解、問題解決、社会性といった幅広い力の土台でもあります。
大切なのは、
- 感情を否定しないこと
- 言語化と表現の手段を支えること
- 気持ちに合った行動へ導くこと
- 「自分で切り替えられた」実感を持たせること
これらを積み重ねていくことで、子どもは「どんな気持ちになっても、自分で立て直せる力=心の回復力」を育んでいきます。
感情の扱い方を学ぶことは、テストの点数よりずっと大切な“生きる力”の学びです。
子どもがしなやかに心を動かせるよう、今日から少しずつ関わり方を見直してみましょう。
↓下記の関連カテゴリーもチェックしてみましょう。
↓下記の外部サイトもチェックしてみましょう。










