子どもが元気に学校や日常生活を送る上で、学力や社会性と同じくらい大切なのが「身体の自己コントロール力」です。
これは単に運動が得意という話ではありません。
自分の体の動きを意識して整える力=フィジカルセルフコントロールを指し、落ち着いて話を聞く、正しい姿勢を保つ、集中を持続させる、など多様な行動の土台となります。
近年、この力が弱くて困っている子どもが増えています。だからこそ今、保護者や教育者が理解しておく必要があるのです。
なぜ体のコントロール力が必要なのか?
子どもの生活の中には「体をどう使うか」が問われる場面がたくさんあります。たとえば――
- 教室で姿勢を保つ
- 体育の時間に指示を理解して動く
- 廊下で人にぶつからず歩く
- 音楽や図工で手先を上手に使う
- スポーツで瞬時に体を切り替える
これらはすべて、「脳からの命令を、体がうまく表現できるか」という力に関係しています。
そしてこの力は、生まれつきだけでなく、幼少期からの経験や関わり方で大きく育つのです。
自分の体をコントロールする力=「自己制御力」の一部
身体のセルフコントロールは、「自己制御力(セルフレギュレーション)」の一つとされ、以下のような要素と密接に関係しています。
- 感情のコントロール
- 行動の切り替え
- 衝動の抑制
- 注意の持続
- 状況の理解
つまり、「体を落ち着けられる子」は「心も落ち着けやすい子」と言えるのです。
反対に、衝動的に動いてしまう、指示が通りにくい、すぐに立ち歩く、疲れやすいといった子どもには、身体コントロールの育ちに凸凹がある可能性も視野に入れましょう。
子どもの身体コントロール力を育てる3つのステップ
1. 「動きに気づかせる」言葉がけをする
「背中がまるくなってきたね」
「いま、手がバタバタしてるよ」
「おしりが椅子から浮いてきたね」
このように実況中継のような声かけをすると、子ども自身が自分の体の状態に気づくきっかけになります。
ただ「姿勢を良くして」や「静かにして」と注意するのではなく、体に目を向けさせる言葉が有効です。
2. 体のコントロールを実感できる遊びをする
- けんけんぱ
- ゆっくり歩くレース
- バランスをとる遊び(片足立ち・平均台)
- ストップ&ゴーの鬼ごっこ
- 手足のグーチョキパー体操
これらはすべて、「今、自分の体をどう動かすか?」を考えながら動く体験です。
体幹やバランス感覚が育ち、コントロール力の土台が築かれます。
家でも、遊び感覚で取り入れられることが多いので、ぜひ気軽に取り入れてみてください。
3. リラックスと集中を交互に体験させる
- 深呼吸をしながら静かに座る
- 音楽に合わせて体を揺らす
- ストレッチをして自分の体のどこが伸びているか感じる
- ヨガやマインドフルネス的な「静」の活動
これらの活動は、子どもが「落ち着く」という感覚を身体的に学ぶことに直結します。
特に、感情が高ぶりやすい子、刺激に過敏な子にとって、体を通じて心を整える経験はとても重要です。
体を整えることは「学びの土台づくり」
子どもにとって、「体を思い通りに使える」という実感は、自信や安心感にもつながります。
- すぐに疲れない
- 長時間座っていられる
- 静かに聞ける
- 人と距離を取って動ける
これらの力が身につくことで、学校生活でも家庭でも、子どもはより主体的に行動できるようになります。
「体が整う」ことは、「学びやすさ」や「人と関わる力」のベースをつくっているのです。
まとめ:体のコントロール力は、トレーニングで育てられる
「じっと座っていられない」
「話を聞いても体がそわそわしてしまう」
こうした子どもの姿に不安を感じる保護者も多いでしょう。けれどそれは「わがまま」や「反抗」ではなく、体のセルフコントロールが育ち途中なだけかもしれません。
毎日の遊びや言葉がけの中で、少しずつ「自分の体と仲良くなる」経験を重ねていくことで、子どもたちは確実に変わっていきます。
体のコントロールは、一生ものの力。
今こそ、その土台をじっくり育てていきましょう。
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