「○○くん、ちょっと苦手なんだけど、先生が“仲良くしようね”って言うんだよね。なんで仲良くしなきゃいけないの？」
子どもからこんな疑問をぶつけられたとき、あなたならどう答えますか？
無邪気なようでいて、実はとても本質的なこの問い。
「仲良くしなさい」と指導すること自体は簡単ですが、その理由を子どもにわかるように伝え、納得感を持たせるには、丁寧な言葉と背景の理解が必要です。
本記事では、「なぜ他者と仲良くすることが大切なのか？」という視点から、子どもの発達段階に応じた関わり方や、社会性・共感力を育む教育のあり方について、キッズ学習アドバイザーの立場から詳しく解説します。
「仲良くする」とは、好きになることではない
まず初めに確認しておきたいのは、「仲良くする」＝「誰とでも親友になる」ではないということです。
子どもにとって、「苦手な子とも仲良くしなさい」という言葉は、「自分の気持ちを無視しろ」と言われているように感じられることがあります。
実際、人間には相性があります。
どれだけ年齢を重ねても、誰とでも気が合う人はいません。
それでも「仲良くする」ことが求められるのは、集団の中で生きていくために最低限の関係性や尊重が必要だからです。
つまり、「仲良くする」とは――
- 相手を思いやる
- 自分の気持ちも伝える
- 相手の存在を認め、傷つけないように接する
という人としての基本的なマナーや社会性を育てることに他なりません。
「好きになる必要はないけれど、無視したり、いじめたりしてはいけないんだよ」
この言葉を、まずは丁寧に伝えることが大切です。
子どもが集団生活の中で学ぶ「人との距離感」
保育園、幼稚園、小学校…子どもは日々の集団生活の中で、さまざまな人と関わりを持ちます。
そこには――
- 自分とは違う価値観
- 苦手なタイプの友だち
- ルールに従わない子
- 自分を誤解する相手
など、さまざまな「摩擦」があります。
しかし、この摩擦こそが人間関係を学ぶ最大のチャンスです。
「自分の気持ち」と「相手の存在」をどう調整していくか。
「合わない人」とどう距離をとりつつ、うまく付き合っていくか。
これらは、学校だけでなく将来の社会生活の中でも必要不可欠なスキルです。
仲良くする＝感情ではなく、態度と姿勢の問題だと気づくことで、子どもは相手との適切な距離感を見つけていくようになります。
仲良くしなければいけない“3つの理由”
では、子どもに「なぜ仲良くするの？」と聞かれたとき、どのように答えればよいのでしょうか？
大人が使える伝え方として、次の3つの理由があります。
1. みんなでいるから、自分も安心していられるから
人間は一人では生きられません。
人と関わることで喜びや安心感を得ることができます。
「自分が安心できる場にするためには、相手にも安心していてもらうことが大事なんだよ」
この視点は、共感性と協調性を育てる出発点になります。
2. 苦手な人からも学べることがあるから
自分とは違う意見や価値観に触れることで、視野が広がることがあります。
「なんでそう思うんだろう？」「どうしてそんな行動をとるのかな？」と考える習慣は、思考力や他者理解の力を伸ばします。
相手を否定するのではなく、「違い」を受け止められる力は、これからの時代に求められる重要な資質の一つです。
3. 社会は“ひとりひとり”で成り立っているから
クラスやチーム、家庭や社会は、さまざまな人が関わり合って成り立っています。
その中で誰かを排除したり、無視したりすれば、自分もまた同じことをされる可能性があります。
「みんなが大事にされる場所を、自分たちでつくることができる」
そんな意識を育てることが、民主主義の基本的な土台にもつながっていきます。
子どもに伝えるときのポイント
子どもに「仲良くしなさい」と言うとき、大人が心がけたいのは次の3点です。
- 命令形ではなく、対話の形で伝える
→「どうしてイヤだと感じたの？」「その子のどんなところが苦手？」と聞いてみる - 無理に感情を押しつけない
→「好きになれとは言ってないよ」「ただ、イヤでも傷つけないことは大切だよ」と伝える - 具体的な関わり方の選択肢を提示する
→「目を合わせて軽く挨拶するだけでもOK」「困っていたら助ける、それだけでもいいんだよ」
これにより、子どもは「仲良くしなければならない」と漠然と押し付けられるのではなく、「どう関わればいいのか」を自分なりに考えるようになります。
まとめ：仲良くすることは「自分を大切にすること」につながる
「仲良くする」ことは、ただ相手に合わせたり、自分を我慢することではありません。
それは、自分の感情を守りつつ、他者も尊重しながら、共に生きる方法を学ぶプロセスです。
だからこそ、「なぜ仲良くしなければいけないのか」という問いは、子どもが社会性の一歩を踏み出す大切な瞬間でもあります。
そのときに、押しつけではなく、丁寧に一緒に考えてあげられる大人でありたいものです。
そして最終的には、こう伝えられるとよいでしょう。
「仲良くするって、誰かのためだけじゃなくて、自分自身が心地よく生きていくために大事なんだよ。」
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