同じ景色を見ても、ある子は細かい部分に注目し、ある子は全体の雰囲気を把握する。
同じ課題を与えても、ある子は論理的に考え、ある子は直感的に答える。
──この違いの背景にあるのが、「認知スタイル」です。
本記事では、学習支援や子育ての質を高めるために知っておきたい「分析的認知」と「包括的認知」の違いと特徴について、発達心理学・教育心理学の視点からわかりやすく解説します。
認知スタイルとは何か?
「認知スタイル」とは、人が情報を知覚し、理解し、判断する際の傾向や癖のことを指します。
これは知能とは別のもので、「どのように考えるか」「何に注目するか」の個性のようなものです。
大きく分けて以下の2つのタイプがあります。
- 分析的認知(analytical cognition)
- 包括的認知(holistic cognition)
このスタイルは、生まれつきの気質や文化的背景、家庭環境、学校教育などの影響を受けながら形成されていきます。
分析的認知の特徴
分析的認知とは、物事を要素に分解して考えるスタイルです。
このタイプの子どもは、以下のような特徴を持ちます。
- 部分に注目しやすい
- 論理的・因果関係で考えるのが得意
- 数式やパターンの理解が早い
- 「なぜそうなるのか」を明確にしたがる
- 課題に対して段階的に取り組む
たとえば、算数の文章題で「まずは何を求めるか」を整理したり、理科の実験結果を原因と結果で分類したりするのが得意です。
【こんな子に多い】
- ルールが明確なゲームを好む
- 「理由を教えて」とよく言う
- 図や表を使った学習が好き
- 作業を手順どおりに進めたがる
包括的認知の特徴
一方、包括的認知とは、物事を全体的・直感的に捉えるスタイルです。
このタイプの子どもには、以下のような傾向があります。
- 全体像を一瞬で把握しやすい
- 文脈や背景に敏感
- 感覚的・感情的に理解する
- イメージで記憶する力が強い
- 周囲の雰囲気や空気をよく読む
たとえば、国語の読解で人物の気持ちをイメージでとらえたり、図工の制作で色彩バランスを自然に調整できたりするのが得意です。
【こんな子に多い】
- 説明よりも実演で覚える
- 感情表現が豊か
- パズルや空間把握が得意
- 全体を見てから部分に進みたがる
どちらが良い・悪いではない
ここで大切なのは、分析的認知と包括的認知に優劣はないということです。
たとえば…
- 算数の解法では分析的認知が役立つことが多い
- 芸術表現や読解感想文では包括的認知が生かされる
どちらも学習や社会生活で必要な力であり、バランスよく育てることが理想です。
教育現場での「ズレ」は認知スタイルの違いが原因かも
たとえば、先生が「手順通りにやりましょう」と指示しても、包括的認知の子は全体の完成形がわからないと不安になって動けないことがあります。
逆に、感覚的に答えを出してしまう包括型の子に対して、「どうやってその答えにたどり着いたの?」と聞くと、うまく説明できず「わかんない」と言ってしまうこともあります。
こうしたズレが続くと…
- 「この子は集中力がない」
- 「説明が雑で理解が浅い」
- 「考える力が弱い」
と誤解されてしまうこともあるのです。
保護者・指導者にできるサポート
認知スタイルに合わせた関わりは、子どもの学びのストレスを減らし、伸びやすさを支えます。
● 分析的認知の子には…
- 手順やゴールを明確に伝える
- 因果関係や理由を丁寧に説明する
- 作業を分割して提示する
- 時系列で整理する練習をさせる
● 包括的認知の子には…
- まず全体像をイメージで示す
- 「感じたこと」や「気づき」を聞く
- 感覚的な表現を許容する
- アートや物語での学びを取り入れる
さらに、子どもに自分の認知傾向を自覚させることも重要です。
- 「きみは全体を見てから動くタイプだね」
- 「細かく説明してからのほうがやりやすいんだね」
こうした声かけは、自己理解を促し、メタ認知を育てる土台になります。
おわりに:「違い」は才能の入口
私たちはつい、「みんなと同じやり方ができる子」を優秀と感じがちです。
でも実際には、子ども一人ひとりの認知スタイルの違いこそが、才能の入り口なのです。
- 細かく分析して深掘りできる子
- 感覚的につかんで直感で創造できる子
それぞれの良さを見つけ、支えていくことが、今の教育に求められています。
認知スタイルを理解し、受け入れ、活かす。
それが、子どもの「自分らしい学び」を支える大人の知恵なのです。
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