夏休みの一大イベントのひとつ、「お盆」。
多くのご家庭で、祖父母の家に帰省したり、お墓参りに出かけたりすることでしょう。
大人にとっては馴染み深いこの行事も、子どもにとっては「なぜやるのか」「何のための時間なのか」がわかりにくく、形式的になりがちです。
しかし実は、お盆は子どもの“心を育てるための絶好の機会”でもあるのです。
本記事では、現代の子どもたちにとってのお盆の意味と、保護者が意識すべき伝え方・関わり方について、教育と心理の視点から詳しくお伝えします。
「お盆」って何? 子どもにも伝えたい由来と意味
お盆は、正式には「盂蘭盆(うらぼん)」といい、ご先祖さまの霊をお迎えし、供養する仏教行事です。
- 8月13日:迎え火を焚いて、ご先祖さまをお迎えする
- 8月14〜15日:供養の食事やお墓参りで過ごす
- 8月16日:送り火を焚いて、霊をあの世へお送りする
このような流れが一般的で、地方や家庭によって風習は異なります。
大切なのは、「亡くなった人のことを思い出し、感謝の気持ちを伝える時間」であること。
つまり、子どもたちが“命のつながり”や“人を敬う心”を学ぶ絶好の文化的装置でもあるのです。
お盆は“目に見えないもの”を感じる時間
現代の子どもたちは、スマートフォンやゲームなどの“即時的な反応”に囲まれています。
その中で、お盆のような「目に見えない存在」を感じる文化体験は、五感や想像力、精神性を育む機会になります。
たとえば──
- 静かな墓地で手を合わせる
- 線香の香りに包まれて過ごす
- 祖父母から昔話を聞く
- 送り火の炎をじっと見つめる
こうした体験は、普段とは異なる“心を落ち着ける時間”をつくり、「今、ここにある命の重み」への気づきを生むのです。
子どもにお盆をどう伝える?年齢別の工夫
お盆を“なんとなくのお休み”で終わらせないためには、年齢や発達段階に応じた伝え方がポイントです。
幼児〜低学年:感覚で伝える
- お線香のにおい、迎え火の火のあたたかさなど、五感に訴える経験を重視。
- 「ご先祖さまって誰?」と聞かれたら、「○○ちゃんのおじいちゃんの、そのまたおじいちゃん」など、身近な言葉で関係性を説明。
中学年〜高学年:意味を伝える
- 「なぜ手を合わせるのか」「お墓って何のためにあるのか」など、行動の背景にある意味を少しずつ伝える。
- 「命のバトン」「家族の歴史」など、心の哲学的問いにも関心が出てくる時期。
中学生以降:考えを共有する
- 「自分がどんな家系に生まれたか」「人が亡くなるとはどういうことか」など、思考力や価値観の対話が可能に。
- お盆をきっかけに、自分の生き方や家族のあり方について考える時間をもつことも有意義。
お盆を通して育てたい3つの“非認知能力”
お盆行事は、知識としての宗教や歴史以上に、子どもの“人間力”を育てる教育的価値があります。
1. 敬う心
お墓の前で自然と手を合わせる行動は、他者に対する敬意の原点です。
「ありがとう」や「おかげさま」といった、感謝の言葉を生み出す心の姿勢が育まれます。
2. 想像力
亡くなった人を“思い出す”ことは、子どもにとって「今はいないけれど、確かにいた人」を想像すること。
これは、他者理解や共感力の発達に直結します。
3. 自分のルーツへの誇り
「自分はどこから来たのか」を感じることは、アイデンティティ(自己の確立)の第一歩。
祖先に思いをはせることは、自分の生き方を考える上でも大切な経験です。
「形式だけ」ではない、“心あるお盆”の過ごし方
お盆の行事が「退屈」「よくわからない」となってしまう最大の原因は、「子どもの視点に立った説明や関わりが足りない」ことです。
次のような工夫をすると、お盆の時間がより豊かなものになります。
- お墓参りの前に「ご先祖さまってどんな人だったんだろう?」と一緒に調べる
- 写真アルバムを見ながら、家族の歴史を語り合う
- 「今日は◯◯さんが帰ってきてるかもね」と目に見えない存在を感じる語りをする
- お供えの食事を一緒につくる
- お盆明けに「どんな気持ちになった?」と会話をもつ
こうしたちょっとした工夫が、子どもにとってお盆が“心で感じる行事”になるかどうかを分ける鍵となるのです。
まとめ:お盆は、子どもにとって“命を感じる学びの時間”
お盆は、亡き人を偲び、家族や命のつながりを実感する、日本ならではの大切な文化です。
そして、現代の子どもたちにとっては、
- 「人を敬う」
- 「目に見えない存在に想いを向ける」
- 「自分のルーツと向き合う」
そんな心を育てる教育的価値に満ちた時間です。
大人が少しだけ意識を向けて言葉をかけ、心の窓を開く関わりをすることで、
「お盆って、なんだかありがたい時間だったな」
という体験が、子どもの心に残るはずです。
今年のお盆は、子どもと一緒に“いのち”を感じる時間にしてみませんか。
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