「子どもにはたくさん運動をさせた方がいい」
これは多くの親や教育者がなんとなく感じていることですが、実はその裏側には科学的な根拠があります。
運動は、単に筋肉を育てるだけではありません。
脳と神経系に直接働きかけて、その発達を促すという、大きな役割を果たしているのです。
特に乳幼児期から学齢期の子どもたちにとっては、運動=神経のトレーニングといっても過言ではありません。
神経系ってなに?どんな働きをしているの?
「神経系」とは、ざっくり言えば「脳」と「脊髄」と、それらから体の各部につながる「神経」のこと。
このネットワークを通じて、以下のような指令が出されています。
- 目からの情報を処理する(視覚)
- 体の位置を把握する(固有感覚・バランス感覚)
- 手足を思った通りに動かす(運動制御)
- 音を聞いて意味を理解する(聴覚処理)
- 危険を察知する(反応系)
つまり、子どもの行動すべての根っこには神経系の働きがあるということです。
だからこそ、神経系の発達がスムーズであることは、学習や人間関係、日常生活のすべての質を左右するのです。
運動がどうやって神経系に働きかけるのか?
人の脳は、使われるほど発達する性質があります。
運動とは、「脳に対する刺激の宝庫」です。
以下のような運動活動は、神経系にとってまさに「栄養」なのです。
- バランスをとる → 小脳や前庭神経が活性化
- 手を使う → 運動野と感覚野の連携が向上
- リズムに乗る → 聴覚処理と運動指令の統合
- 反復練習 → 神経回路の効率化(運動の自動化)
特に、神経細胞同士をつなぐシナプスは、繰り返し使われることで強化されます。
運動の中で何度も「考えて→動かして→感じる」というサイクルを回すことが、神経回路の定着とスピード向上につながっていくのです。
子どもの発達にとって「運動」は最良の神経刺激
とくに重要なのは、運動による神経系の発達は、幼少期ほど効果が大きいということです。
神経系の発達は年齢とともに進みますが、「プレゴールデンエイジ(3~8歳)」「ゴールデンエイジ(9~12歳)」と呼ばれる時期には、特に神経系の可塑性が高くなります。
この時期にたくさんの種類の運動を経験すると、以下のような力が育ちやすくなります。
- 動きをすばやく切り替える
- 姿勢を安定させる
- 器用に手先を使う
- 集中力を長く保つ
- 考えながら動く(認知機能と運動の統合)
だからこそ、小学生時代の「運動経験」は単なる体力づくりにとどまらず、将来の学習力や社会性を支える“神経の素地”を育てるものなのです。
どんな運動をさせれば神経が育つのか?
神経系を発達させるためには、「型にはまった単調な運動」よりも、「多様で変化に富んだ運動」が効果的です。
たとえば以下のような活動が挙げられます。
- 木登りやジャングルジム(空間認知とバランス)
- 鬼ごっこ(反応速度と判断力)
- ボール投げ(手と目の協応)
- 鉄棒や縄跳び(リズムと体幹制御)
- じゃんけんゲーム+動きの組み合わせ(認知運動統合)
このように「脳を使って体を動かす」遊びは、神経の配線を効率的に刺激することができます。
また、運動を楽しんで続けることが大切なので、「子どもがワクワクしながら取り組める環境」づくりが最優先です。
運動不足が子どもに与えるリスクとは?
現代の子どもたちは、コロナ禍や生活習慣の変化により、圧倒的に運動時間が減っています。
その結果、以下のようなリスクが懸念されています。
- 姿勢保持が苦手
- 疲れやすく学習持続ができない
- 衝動的で落ち着きがない
- 不器用で運動を避ける
- イライラしやすく感情が乱れがち
これらの特徴の背景には、「十分に発達していない神経系」が隠れていることもあります。
子どもの行動面や学習面の問題を見たとき、まず「神経系の発達はどうか?」という視点をもつことが、解決の糸口となります。
まとめ:運動は「脳と神経のスイッチ」を入れる活動
子どもにとって、運動とは「体を動かすこと以上の価値」を持っています。
それは、神経の発達を促し、学びの質そのものを高めるカギなのです。
- 運動は神経系への直接的な刺激
- 神経回路のつながりを強くする
- 脳と体の連携をスムーズにする
- 心の安定や集中力にも関係する
日常生活の中で、楽しみながら体を動かす機会を意識的に増やしていくこと。
それが、子どもたちの「身体」「心」「学び」のすべてを支える土台となります。
学習以前に、まずは体から整える。
この視点をぜひ大切にしていただきたいと思います。
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