親戚が集うお正月、お盆、法事、冠婚葬祭──。
こうした「親族の集まり」は、現代では少しずつ減少傾向にあるものの、子どもにとっては非常に貴重な学びと心の育ちの機会です。
本記事では、なぜ“親族の集まり”が大切なのか、そしてその場で交わされる「感情の交換」が、子どもの社会性や人間関係力をどう育てるかについて、教育と発達心理の視点からお伝えします。
親族が集まることの価値とは?──家族の“原点”を体験する時間
家族とは、もっとも身近な人間関係のひとつ。
しかし、普段の生活では、両親ときょうだいだけで構成される「核家族」にとどまりがちです。
親族が集まる場には、祖父母、叔父・叔母、いとこ、さらにその配偶者や子どもなど、多世代・多様な人間関係が存在します。
この空間は、子どもにとって、
- 初対面の人との距離感を探る
- 年齢差や立場の違いを理解する
- 人によって考え方が異なることを体験する
など、社会性を実地で学ぶ「生きた教室」なのです。
「感情の交換」とは?──言葉以上に伝わる心のやりとり
感情の交換とは、言葉や表情、ふるまいを通して、互いの気持ちをやりとりすることを指します。
特に親族が集まる場では、以下のような形で感情の交換が行われます。
- 久しぶりの再会を喜ぶ笑顔と「元気だった?」の言葉
- 子どもが褒められて照れながらも嬉しそうに笑う
- 亡くなった人の話をしながら、自然と涙ぐむ場面
- 昔話に花が咲き、大人が大笑いする瞬間
こうした言葉だけではない感情のやりとりを、子どもは敏感に感じ取り、自分の中に“他者の感情を受け止める力”を育てていきます。
なぜ子どもにとって「感情の交換」が重要なのか?
感情の交換には、以下のような教育的・発達的な意味があります。
1. 共感力と社会性を育てる
人の話を聞き、うなずき、笑い、驚く──。
それらはすべて、「相手の気持ちを感じ取って反応する」行動です。
感情の交換は、子どもが共感する力(エンパシー)を養い、人との関係を築く基礎になります。
2. 自己表現力のトレーニングになる
「この前学校でね…」「サッカーでゴールしたんだ!」
子どもが自分の経験や感情を話すことも、感情の交換の一つです。
親族という安心できる相手に自分を出せる体験は、子どもの自己肯定感やコミュニケーション力の土台を育てます。
3. 多様な価値観に触れる機会
親族の中には、話し方、考え方、ライフスタイルが異なる人がたくさんいます。
そうした違いを目の当たりにすることで、子どもは
- 「自分と違ってもいいんだ」
- 「いろんな人がいて社会はできている」
といった多様性への理解と寛容さを自然と学んでいきます。
大人ができること:子どもに“感情の交換”を体験させる関わり方
親族が集まる場を、子どもにとって「感情の交換の場」にするために、保護者としてできることはたくさんあります。
子どもを話の輪に入れてあげる
- 「○○ちゃん、夏休みにこんなことがあったんだって」と話題を振る
- 話しすぎず、子どもが自分で話すタイミングを待つ
- 緊張している子にはそっとサポートしながら輪に入れていく
子どもは、「大人と対等に扱われた」と感じた瞬間に、自信と意欲を高めます。
大人同士の温かいやりとりを見せる
- 昔話で笑い合う
- 亡き人への想いを共有する
- 意見が違っても穏やかに受け入れる様子を見せる
そうした人間関係の温度を、子どもはしっかり感じ取り、「人と関わるって、あたたかいことなんだ」と学びます。
あとで感想を聞いてみる
集まりが終わった後、「どうだった?」「誰と話したのが楽しかった?」など、子どもなりの視点を言語化する機会をもつことで、感情の整理にもつながります。
親族の集まりは「心の教室」──今だからこそ大切にしたい時間
近年では、親族とのつながりが希薄になったという声も聞かれます。
しかし、だからこそ、親族が一堂に会する機会は、子どもの心に深く残る貴重な体験となるのです。
- 多世代の人と関わる
- 感情をやりとりする
- 自分を表現する
- 他者を受け入れる
これらはすべて、学校の勉強だけでは得がたい、「生きる力」を育てる学びです。
まとめ:感情の交換が“生きた人間関係”を育てる
親族の集まりは、単なる「年中行事」ではなく、子どもにとっては人間関係のあり方を五感と心で学ぶ“心の教室”です。
そこには、教科書には載っていない大切な学びがあります。
そしてその学びの核心にあるのが、「感情の交換」。
人と人が心を通わせる体験を通して、子どもは、
- 人の話を聞くこと
- 自分の気持ちを表すこと
- 違いを受け入れること
といった、これからの社会を生き抜くために必要な“人間力”を育てていくのです。
次に親族で集まる機会があったら、子どもにとっても“心が動く交流の時間”になるよう、ちょっとだけ大人が意識してみませんか?
↓下記の関連カテゴリーもチェックしてみましょう。
↓下記の外部サイトもチェックしてみましょう。
すくすく子育て(NHK 教育情報サイト)を見る