子どもが問題にぶつかったとき、どんなふうに考えるでしょうか。
答えを一つに絞って正解を探すタイプもいれば、自由な発想で多くの可能性を探るタイプもいます。
その違いは、思考のスタイル、つまり「垂直思考」と「水平思考」に表れます。
本記事では、教育の現場や家庭で活用できる水平思考と垂直思考の違い、バランスの重要性、そして育て方について、教育心理の観点からわかりやすく解説します。
「垂直思考」とは?──論理と正解を重んじる思考
垂直思考とは、論理的な筋道に沿って、正解へと一歩ずつ近づいていく考え方です。
これは、いわば“深く掘り下げていく思考”であり、以下のような特徴があります。
- 与えられた情報をもとに、正解を導き出す
- 一つひとつのステップが論理的で、飛躍がない
- 一つの答えを求める(収束的思考)
学校の授業や試験、また数学や理科の問題解決では、この垂直思考が非常に重視されます。
たとえば、次のような問題:
「水が100ml入った容器に、毎分20mlずつ水を加えると、5分後には何mlになるか?」
この問いは、情報を整理し、計算を重ねて解答を導く垂直思考により正解へたどりつきます。
この力は、論理的思考力・集中力・計画性などを支える重要な基盤です。
「水平思考」とは?──発想と可能性を広げる思考
一方、水平思考とは、枠にとらわれず、多様な視点や発想を使って考える思考です。
1960年代に心理学者エドワード・デ・ボノ氏が提唱した概念で、以下のような特徴があります。
- 前提や常識を疑い、思い込みを外して考える
- 飛躍や偶然を大切にする
- 複数の答えや方法を見出す(拡散的思考)
例えば、
「ペンの新しい使い方を10個考えてみよう」
といった課題は、水平思考のトレーニングにあたります。
「書く」「指で回して遊ぶ」「ヘアアレンジに使う」「キーボードの掃除に使う」など、答えは一つではありません。
このように水平思考は、柔軟性・創造性・コミュニケーション力の源になる力です。
両者のバランスが子どもの“未来力”を育てる
垂直思考が「問題を正確に解く力」だとすれば、水平思考は「問題そのものを新しく発見する力」です。
現代の教育現場や社会では、この両者のバランスがますます重要になっています。
たとえば、子どもが自由研究を行う際:
- 垂直思考だけでは、「調べてまとめる」で終わってしまう
- 水平思考だけでは、発想は面白いが論理的な検証ができない
両方が組み合わさることで、
「新しい視点から問題を見つけ、それを論理的に解決していく力」
──すなわち、課題解決力が養われます。
家庭でできる!水平思考と垂直思考の育て方
思考力は、日常の中でも十分育てることができます。
以下に、それぞれの思考を伸ばすための具体的なアプローチを紹介します。
【垂直思考を育てるには】
- パズルや論理クイズに親しむ
- 算数の「なぜそうなるのか」を言語化させる
- 本の要約をさせて、要点をまとめる力を養う
- 手順を順番に説明させる(例:お味噌汁の作り方)
こうした活動で、筋道立てて考える力、正確に理解する力を育てます。
【水平思考を育てるには】
- 「この箱、他に何に使える?」と問いかける
- 親子で“もしも○○だったら”ゲームをする
- 図工や創作活動で、自由な発想を尊重する
- 絵本の続きを自由に考えて話してもらう
このように、「正解がない問い」を楽しむ環境を用意することが大切です。
思考スタイルの偏りに気づくことが第一歩
ある子は「正解を求めて安心する」タイプかもしれません。
別の子は「思いついたことを自由に話したい」タイプかもしれません。
まずは、その子の思考スタイルの傾向を大人が理解し、不足している方の思考を少しずつ広げていくことが、バランスの良い思考力を育てる鍵となります。
教育の目的は、どちらか一方の思考を強化することではなく、
多様な視点を柔軟に使いこなせる人を育てることです。
まとめ:未来を切り拓く子どもに必要な「2つの思考力」
- 垂直思考は、問題を筋道立てて解決する力
- 水平思考は、枠を超えて発想を広げる力
この2つは決して対立するものではなく、相互に補い合うものです。
社会に出たとき、正解がひとつではない課題に立ち向かうためには、どちらの力も必要不可欠です。
「しっかり考えられる力」と「自由に考えられる力」、
その両方を子どもにプレゼントできるような関わりを、今日から少しずつ始めてみませんか。
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