子どもの心の不調に気づいて、思い切って病院に電話した。なのに、返ってきたのは「初診は3か月後です」という言葉。
受話器を置いたあと、しばらく動けなかった——そんな経験をされた方もいるのではないでしょうか。
「3か月も待って大丈夫なの?」「その間に悪くなったらどうしよう」「私は何をしてあげたらいいの?」
頭の中でぐるぐる回る不安。何かしたいのに、何をすればいいかわからない。そのもどかしさが、いちばん苦しいかもしれません。
この記事では、受診までの待機期間に家庭で「これはやっておくといい」ということを、チェックリスト形式でまとめました。すべてを完璧にこなすためのリストではありません。「ああ、これならできそう」と思えるものを見つけて、ひとつでも取り入れてもらえたらうれしいです。
まずは深呼吸。予約が取れたこと自体が、大きな一歩です
チェックリストの前に、ひとつだけ。
予約の電話をかけること自体、簡単なことではなかったはずです。「本当に病院に連絡していいのかな」「大げさかもしれない」と迷いながらも、お子さんのために行動した。その時点で、もう支援は始まっています。
3か月待ちの事実は変えられなくても、その3か月を「ただ不安に過ごす時間」にするか「少しずつ準備を整える時間」にするかは、変えられます。
チェックリスト①:まず確認しておきたい基本のこと
最初のステップは、情報を整理して「見えるようにする」こと。頭の中だけに入っていると、不安がどんどん膨らんでいきます。書き出すだけで、少し落ち着くことがあります。
- □ 病院の初診予約が完了している
- □ 初診日・時間をカレンダーやスマホに記録した
- □ 担任の先生やスクールカウンセラーに「予約を取った」ことを伝えた
- □ お子さん本人にも、年齢に合った形で受診のことを話した
お子さんへの伝え方は迷うところですよね。小さな子であれば「○○ちゃんの気持ちのことを、お話を聞いてくれる先生がいるんだよ。今度一緒に行ってみようね」くらいの言い方で大丈夫です。「病院」という言葉に抵抗があるなら、無理に使わなくてもかまいません。
チェックリスト②:子どもの様子を「見て、メモする」
受診当日、お医者さんやカウンセラーに状況を伝える場面を想像してみてください。
「最近どうですか?」と聞かれたとき、記憶だけだと「えっと、なんとなく元気がなくて…」となりがちです。でも日々の記録が手元にあれば、子どもの変化をより正確に伝えられます。
- □ 朝起きる時間、夜眠る時間、ぐっすり眠れているかどうかを見ている
- □ ごはんの量や食欲の変化に気をつけている
- □ 表情や口数の変化を気にかけている
- □ 学校に対する気持ちが日によって違うかどうかを見ている
- □ 家での過ごし方(遊び、勉強、スマホやゲームの使い方など)を観察している
- □ 気になる言葉や行動があったとき、日付と一緒に短いメモを残している
メモはノートでもスマホのメモアプリでも、何でもOKです。「11/5 朝なかなか起きず。食欲なし。夕方は少し元気で弟と遊んでいた」——これくらいの短さで十分です。
こうした記録は、受診時の大切な手がかりになります。同時に、あとで見返すと「あ、あの週よりは少し良くなっているかも」と、小さな変化に気づけることもあります。
チェックリスト③:家の中に「安心できる空気」を作る
待機中の家庭で何より大切なのは、子どもが「ここにいていいんだ」と感じられること。特別なプログラムや教材は必要ありません。日常の中の、ほんの小さなことの積み重ねです。
- □ 朝起きる時間や食事の時間など、基本の生活リズムをゆるやかに保てている
- □ どんなに小さなことでも「今日できたこと」を言葉にして伝えている
- □ 叱る場面を減らし、「見守る」時間を増やすよう心がけている
- □ 一緒に笑える時間を意識して作っている(テレビ、散歩、トランプなど何でも)
- □ 子どもが話したそうなとき、手を止めて聞ける姿勢でいる
- □ 話してくれた内容に「それは違うよ」と言わず、まず「そうだったんだね」と受け止めている
最後の項目、これが実は一番難しいかもしれません。
たとえば子どもが「もう学校なんて絶対行かない」と言ったとき。つい「そんなこと言わないで」と返したくなる。でもここで「そっか、そう思うくらい辛かったんだね」と一度受け止めると、子どもの中で「この人には話して大丈夫」という安心が生まれます。
受け止めることと、同意することは違います。「学校に行かなくていいよ」と言っているわけではなく、「あなたの気持ちはちゃんと聞いたよ」と伝えているだけ。この違いを知っているだけで、日々のやりとりが少し楽になるはずです。
チェックリスト④:病院の前に使える「つなぎの支援」を探す
受診が先でも、今すぐ相談できる場所はあります。意外と知られていないだけで、地域にはいくつかの窓口が開かれています。
- □ スクールカウンセラーの来校日を確認し、面談の予約を入れた(保護者だけでも相談可能)
- □ 市区町村の教育センター(教育相談室)を調べてみた
- □ 子ども家庭支援センターなど、福祉系の窓口があるか確認した
- □ 民間のカウンセリングルーム(臨床心理士など)も選択肢として検討している
全部に連絡する必要はありません。「こういう場所があるんだ」と知っているだけで、いざというときの安心感が違います。
教育センターは自治体が運営していて、無料で相談できるところがほとんどです。電話で「子どものことで相談したいのですが」と伝えれば、心理の専門スタッフにつないでもらえます。
お子さん自身がカウンセラーと話してみて、「誰かに聞いてもらうと少し楽になるんだな」と感じること。その体験だけでも、心の回復のきっかけになることがあります。
チェックリスト⑤:親自身の心を守る
ここからは、お子さんではなく「あなた自身」のためのチェックリストです。
子どもの不調を目の前にしているとき、親の心も確実に消耗しています。でも多くの方が、自分のことは後回しにしてしまう。「子どもが大変なのに、自分のことなんて」と。
けれど、ちょっと立ち止まって考えてみてください。飛行機の緊急時、酸素マスクは「まず自分につけてから、子どもにつけてください」と案内されますよね。あれと同じです。親が息切れしてしまったら、子どもを支える腕も震えてしまいます。
- □ 不安な気持ちを、信頼できる誰かに話せている
- □ ネットやSNSの情報を読みすぎて、かえって不安が増していないか振り返った
- □ 家庭の中が「子どもの問題の話」一色にならないよう、別の話題も取り入れている
- □ 自分自身の睡眠・食事・休息がおろそかになっていないか確認した
- □ 「自分のせいだ」と責めすぎていないか、意識して立ち止まっている
「がんばりすぎないことも、子どものためになる」——これは気休めではありません。
家庭の空気が張りつめていると、子どもはそれを敏感に感じ取ります。「自分のせいでお母さん(お父さん)が辛そう」と思ってしまうことも。親が少しでも穏やかに過ごせている姿は、子どもにとって何よりの安心材料なんです。

全部できなくて大丈夫
このチェックリスト、全項目にチェックが入らなくても何の問題もありません。
今日はひとつだけ。明日はもうひとつ。それで十分です。
「やれることを探して、少しずつやっている」——その姿勢そのものが、子どもへの一番のメッセージになっています。
お子さんにとって最大の安心は、特別なプログラムでも完璧な対応でもなく、「自分のことを気にかけてくれている大人がそばにいる」ということ。
受診の日まで、あせらず、ひとつずつ。親子で一緒に、安心の土台をゆっくり積み上げていきましょう。
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