子どもが学校や友だちとの関わりの中で、「あの子ムカつく」「○○ってウザい」など、人を悪く言う言葉を口にしているのを聞いたとき、戸惑いや不安を感じたことはありませんか?
「人を悪く言ってほしくない」
「思いやりのある子になってほしい」
そう願う保護者の方は多いものです。
この記事では、子どもが他人のことを悪く言わずに育つために必要な考え方と、家庭でできる具体的な関わり方について、心理学や発達理論の観点から丁寧に解説します。
悪口を言うのは、悪い子だからではない
まず最初に押さえておきたいのは、「悪口を言う=悪い子」「性格が悪い」と決めつけるのは早計だということです。
子どもが他者を悪く言ってしまうとき、背景には次のような心理が隠れていることがよくあります。
- 自分が傷ついたことをうまく言葉で表現できない
- 自信がなく、他人を下げることで安心しようとする
- 周囲に合わせようとして“悪口の輪”に加わってしまう
- 強い正義感や理想から、批判的になってしまう
つまり、未熟な心の防衛反応として「悪口」が出てくるのであり、大人のような意図的な悪意とは異なることが多いのです。
この視点を持つことが、子どもを正しく理解し、成長を支える第一歩となります。
他人を悪く言わない子に育てる3つの土台
では、他人を悪く言わない子どもに育てるために、家庭ではどのような環境や関わりが必要なのでしょうか。
ここでは、そのために必要な「3つの土台」をご紹介します。
1. 家庭の会話に「人を尊重する文化」を根づかせる
子どもは、大人が想像する以上に家庭内の会話から価値観を学んでいます。
日常的に、他人の失敗や欠点、芸能人や先生、ママ友などの悪口や批判的な言葉が多い家庭では、それが“普通”になります。
反対に、家庭内で次のような習慣があると、子どもも自然と「人を尊重する感覚」を身につけます。
- 失敗や違いを許容する発言:「あの人なりにがんばってるのかもね」
- 良いところを見つけて口に出す:「○○さんのあのアイデア、面白いね」
- 多様な価値観を認める姿勢:「いろんな考えがあるって大切だよね」
まずは大人が、尊重と寛容を大切にする姿勢を“見せる”ことが、最大の教育になります。
2. 「自信」と「安心」がある子は、人を悪く言わない
他人を悪く言ってしまう背景には、「自分自身への不安」や「劣等感」があることが多く見られます。
だからこそ、次のような働きかけがとても大切です。
- 頑張りや過程をしっかり認める声かけ:「結果よりも、工夫したことがすごいね」
- 失敗しても受け止める環境づくり:「うまくいかなくても大丈夫、次があるよ」
- 家庭が“安全基地”であること:「どんなときも、あなたの味方だよ」
自己肯定感の土台がしっかりある子ほど、他人を攻撃する必要がなくなっていきます。
3. 「言葉の力と影響」を丁寧に教える
子どもにとって、言葉の影響はまだ実感しにくいものです。
そこで、悪口を「禁止」するよりも、言葉がどれだけ人に影響を与えるかを丁寧に伝えていくことが大切です。
例えば:
- 絵本やアニメのシーンを見ながら「この言葉を言われて、相手はどう感じただろう?」と問う
- 自分が言われて嬉しかった言葉、嫌だった言葉を振り返る機会をつくる
- 「もし誰かに○○って言われたら、どんな気持ちになる?」と想像を促す
相手の立場に立つ「想像力」を育てることが、思いやりある言葉遣いにつながります。
叱るのではなく、「気づかせる」関わりを
仮に子どもが人の悪口を言ったときも、すぐに「そんなこと言っちゃダメ!」と叱るのではなく、
- 「何があったの?」
- 「そのとき、どんな気持ちだったの?」
- 「相手はどう感じたと思う?」
と、背景にある気持ちや状況に寄り添いながら、一緒に考える対話が効果的です。
叱って抑え込むよりも、「自分で気づき、考える力」を育てることが、長期的な変化につながります。
学校や友達関係で悪口を言われたときの対応もセットで
最後に、子どもが悪口を「言う側」だけでなく「言われる側」になることも想定して、心の守り方も教えておくと良いでしょう。
- 「人の言葉ですべてを決めなくていい」
- 「あなたをちゃんとわかってくれる人が、必ずいる」
- 「嫌なことをされたら、逃げていい、助けを求めていい」
このような言葉がけは、他人を攻撃しなくても、自分を守れる力につながります。
まとめ:思いやりと自己肯定感のある言葉を選べる子に
人を悪く言わない子に育てるために必要なのは、ただ「言ってはいけない」と禁止することではありません。
- 大人が日常的に尊重の言葉を使っているか
- 子どもが自己肯定感を持てる環境になっているか
- 言葉の持つ力を、丁寧に伝えられているか
これらを意識することで、子どもはやがて、思いやりと自信に満ちた言葉選びができるようになります。
「人を下げることで自分を保つ」のではなく、
「人を認めながら、自分も大切にできる」子どもを育てること。
それが、いま私たち大人にできる、子どもの未来への最高のギフトかもしれません。
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