「そんなつもりで言ったんじゃないのに」
「何度言っても伝わらない」
「ちゃんと話しているはずなのに、子どもが黙り込んでしまう」
こうした場面、子育てや教育の現場では日常的に起こります。
これは決して親や先生、子ども自身が悪いわけではなく、「コミュニケーションのズレ」が原因となっていることが多いのです。
本記事では、子どもとの関わりにおける伝え方の“ズレ”の正体とその修正方法について、発達段階・認知特性・非言語要素などをふまえて解説します。
コミュニケーションのズレは「表現」と「受け取り」の違いから起こる
まず知っておきたいのは、人はそれぞれ「伝えるスタイル」と「受け取るスタイル」が違うということです。
たとえば…
- 親:「もう少し丁寧に書きなさい」
- 子:「えっ、字もきれいに書いたし…」
これは、「親の求める“丁寧さ”」と「子どもの思う“丁寧さ”」のズレです。
親は全体の整え方や余白、文字の配置まで含めて言っているかもしれませんが、子どもは字の形だけを意識していた、というケースです。
このように、同じ言葉でも、相手が受け取る意味は異なることがあるのです。
子どもに多い「言葉どおりに受け取る」傾向
特に小学生年代の子どもは、発達上、言葉をそのままの意味で受け取る傾向が強いです。
- 「ちゃんとやって」→「ちゃんとって何?」
- 「ふざけないで」→「どこからが“ふざけ”になるの?」
- 「すぐ終わらせなさい」→「“すぐ”って1分?10分?」
つまり、「大人が抽象的に伝えがちな表現」は、子どもにとっては意味が不明瞭でズレやすいということです。
また、認知の特性により、比喩や皮肉、暗黙の了解を理解するのが難しい子も少なくありません。
コミュニケーションのズレが続くとどうなるか
小さなズレでも、何度も繰り返されると以下のような影響が出てきます。
- 子どもが混乱し、自己肯定感を下げてしまう
- 「怒られた」「嫌われている」と誤解してしまう
- 親や先生との関係に距離が生まれる
- 子どもが本音を話さなくなる
つまり、コミュニケーションのズレは信頼関係の損失につながる可能性があるのです。
ズレを防ぐための4つの工夫
1. 「曖昧な言葉」を具体的にする
「ちゃんと」「すぐ」「もっと」「しっかり」などの曖昧語は、数字や行動で具体化しましょう。
- ✕「すぐ片づけなさい」
- ○「今から5分以内に机の上を空にしよう」
- ✕「ちゃんと話を聞いて」
- ○「相手の目を見て、うなずきながら聞こう」
2. 「伝えたつもり」をやめて確認する
伝えた後に「理解できているか」を子どもに確認しましょう。
- 「今の話、どう思った?」
- 「わからないところあった?」
- 「何から始めればよさそう?」
これにより、子どもの受け取りを知る手がかりになります。
3. 非言語のズレにも注意を払う
声のトーン、表情、身ぶりなども、子どもにとっては「意味を持つ情報」です。
- 笑顔で「頑張ってね」と言うのと
- 無表情で「頑張って」と言うのでは
伝わり方が大きく違うのです。
とくに、感受性の高い子どもは、言葉以上に「表情」や「空気感」から意図を読み取ろうとします。
4. 「ズレたときの修正」ができる大人でいる
コミュニケーションは“キャッチボール”です。
投げたボール(言葉)がうまく返ってこなかったとき、「どうして伝わらなかったのか」と大人が投げ方を見直す視点が必要です。
- 「ごめん、今の言い方だとわかりにくかったかな」
- 「どういう言い方ならわかりやすかった?」
こうした姿勢が、ズレを修正できる関係性を育てます。
「伝わる」は技術ではなく信頼から生まれる
大人の言葉が子どもに伝わるとき、そこには信頼があります。
- 「この人の話は安心して聞ける」
- 「間違っても怒られない」
- 「わからないと言っても受け入れてくれる」
こうした空気があってこそ、子どもは「ズレ」を恐れずに表現できるようになるのです。
逆に、「ズレること=悪いこと」「わからないと言えない雰囲気」があると、子どもは本音を閉じてしまいます。
おわりに:ズレは「成長のチャンス」
コミュニケーションのズレは避けるべきものではなく、「お互いの違いを知るチャンス」でもあります。
大切なのは、ズレたことに気づいたときに、関係を深める方向に舵を切る姿勢です。
- 「伝える」とは、相手の立場で言葉を選ぶこと
- 「聴く」とは、相手の世界を理解しようとすること
子どもとの関係がより良いものになるよう、言葉の意味だけでなく、その背景にある感情や価値観に目を向けてみましょう。
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