学校から「一度、専門の機関に相談してみませんか」と言われた。すぐに電話してみたら、返ってきたのは「初診は3か月後になります」という言葉。
——3か月。
目の前の子どもは、今日も朝起きられなかったり、急に泣き出したり、「学校に行きたくない」とつぶやいたりしている。なのに、3か月も待つの?その間、どうしたらいいの?
この状況に置かれたとき、不安と焦りで胸がいっぱいになるのは当然のことです。
でも、ひとつだけ先にお伝えしたいことがあります。
この待っている期間は、「何もできない空白の時間」ではありません。家庭だからこそできること、今日から始められることがあります。
そもそも、なぜこんなに予約が取れないのか
まず、背景を知っておくと少し気持ちが楽になるかもしれません。
「うちの子だけ後回しにされているのでは?」と感じてしまうこともあると思いますが、実際にはどこの地域でも同じような状況が起きています。
不登校の子どもの数は、ここ数年で大きく増えました。2023年度の文部科学省の調査では、小中学生の不登校は約34万人を超え、過去最多を更新しています。発達の特性について早めに相談したいという家庭も増えました。
一方で、子どもの心を専門に診られるお医者さんやカウンセラーの数は、なかなか追いついていません。1つの病院で1日に診られる初診の枠は、ほんの数枠ということも珍しくないんです。
だから「3か月待ち」は、あなたのお子さんが軽く見られているわけでは決してない。全国的に、それだけ多くの子どもと家庭が助けを求めている、ということなんです。
待っている間にできること①:学校とのつながりを切らない
予約が取れたら、まず学校に「〇月に受診予定です」と伝えてみてください。それだけで終わりにせず、その後も情報を共有し続けることが、子どもを支える大きな力になります。
たとえば、こんなことを伝えてみてはどうでしょう。
- 「最近、朝は少し起きやすくなってきました」
- 「夜、眠れない日が続いています」
- 「本人は図工の時間だけなら行ってもいいと言っています」
相手は担任の先生だけでなく、保健室の先生(養護教諭)やスクールカウンセラーでもかまいません。
子どもの側から見ると、「学校の人が自分のことを気にかけてくれている」と感じられることは、それだけで心の支えになります。直接会えなくても、先生から「待ってるよ」と一言メッセージをもらえただけで表情が変わった、という話は実際によく聞きます。
大人同士が連携していること自体が、子どもの安心感を下から支えているんです。
待っている間にできること②:病院以外の相談先を使ってみる
「病院の初診は先だけど、今すぐ誰かに話を聞いてほしい」——その気持ちに応えてくれる場所は、実はいくつかあります。
- 教育センター(教育相談室):市区町村が運営していて、心理の専門スタッフが対応してくれます。無料で利用できるところがほとんどです。
- 子ども家庭支援センター:子育て全般について相談できる窓口です。福祉の視点からのアドバイスがもらえることもあります。
- スクールカウンセラー:学校に来ている日が限られていますが、予約すれば保護者だけでも相談できます。
- 民間のカウンセリングルーム:費用はかかりますが、比較的早く予約が取れることがあります。
どの窓口でも、「こういう場面で困っている」「家ではどう接したらいいか」といった具体的な相談ができます。
また、子ども自身がカウンセラーと話してみて、「誰かに気持ちを聞いてもらうと少し楽になるんだな」と感じること。この体験自体が、心の回復の入り口になることもあるんです。
待っている間にできること③:毎日の「いつも通り」を大切にする
心が不安定なとき、子どもの生活リズムは乱れやすくなります。夜眠れない、朝起きられない、食欲がない、お風呂に入りたがらない——そんな変化が出てくることも。
そんなときこそ、「いつも通り」のリズムをゆるやかに保つことが、子どもの心と体を静かに支えてくれます。
- 朝はだいたい決まった時間にカーテンを開ける
- 食事の時間をなるべくそろえる
- 外に出られなくても、窓際で日の光を浴びる時間を作る
- 勉強は無理強いしないけれど、「今日はこれだけやってみようか」と小さな区切りを用意する
完璧にこなす必要はありません。10のうち3つできれば十分です。「全部崩れてしまった」と感じる日も、ごはんを一緒に食べられただけでOK。
もうひとつ、意識してみてほしいのが「何気ない会話の時間」です。
朝の身支度をしながら、おやつを食べながら、寝る前の布団の中で。「今日どうだった?」と聞かなくても、隣にいてぽつぽつ話すだけの時間。
このとき大事なのは、アドバイスしないこと、正そうとしないこと、ただ「うん、うん」と聞くことです。
「話しても否定されない」「聞いてくれる人がいる」——この感覚が、子どもの中に安心の土台を作っていきます。
待っている間にできること④:親自身の心もケアする
ここ、つい後回しにしがちですが、実はとても大事な話です。
子どもの心の不調を目の前にすると、親の心も大きく揺れます。
「私の育て方が悪かったのかな」「もっと早く気づいてあげればよかった」「この先どうなるんだろう」
そんな思いが頭の中でぐるぐる回って、眠れない夜もあるかもしれません。
だから、親自身も誰かに話を聞いてもらってください。
パートナー、自分の親、信頼できるママ友やパパ友。先ほど紹介した相談窓口は、保護者自身の不安を聞いてもらう場としても使えます。
ひとつだけ気をつけたいのは、SNSやネットの情報に振り回されすぎないこと。検索すればするほど不安が膨らんで、「うちの子も最悪の場合は…」と考えてしまうことがあります。情報を集めること自体は悪くありませんが、読んで不安が増えるものからは距離を取るという選択も、自分を守る大切な行動です。
家庭の空気は、子どもに伝わります。親がピリピリしていれば子どもは「自分のせいだ」と感じやすくなるし、親が少しでも穏やかでいられれば、子どもの心にもゆとりが生まれます。
がんばりすぎない。完璧を目指さない。それも立派な「子どものためにできること」のひとつです。
待っている間にできること⑤:「紹介された」という事実を前向きに受け止める
学校から専門機関を勧められたとき、ショックを受ける方もいらっしゃるかもしれません。「そんなに深刻なの?」「うちの子は普通じゃないってこと?」と。
でも、学校が受診を勧めるのは、「学校だけの対応では、この子に十分な支えを届けきれない」と感じているからです。
これは子どもを否定しているのではなく、「もっとこの子に合ったサポートを見つけたい」という、学校からの前向きなメッセージです。
だからこそ、たとえ受診が数か月後になっても、予約はしっかり取っておく。そしてその間も、学校や相談窓口と連携しながら家庭でできることを続ける。もし子どもの様子が急に変わったり、心配な言動が見られたりしたときは、遠慮なく病院に電話して相談する。
「待ちながら動く」。この姿勢が、子どもと家庭を確実に支えていきます。

「ひとりじゃない」と思える環境を
子どもの心の問題は、すぐに解決できるものばかりではありません。時間がかかることもあるし、一進一退を繰り返すこともあります。
それでも、日々の暮らしの中で「いつも通り」を保つこと、話を聞いてくれる人がいること、「あなたのことを気にかけている大人がちゃんといるよ」と伝え続けること。
こうした小さな積み重ねが、子どもの中にある回復する力を静かに、でも確かに支えていきます。
予約の日が来るまでの時間は、決して無駄な時間ではありません。家庭という一番身近な場所で、今日からできることを、ひとつずつ。
キッズ学習アドバイザーでは、子どもの発達や学習支援に関するブラッシュアップした情報をnoteでも多数発信しています。ぜひ、ご覧ください!

