お子さんに「今日、学校どうだった?」と聞いて、返ってきた答えが「ふつう」。
「宿題は何が出たの?」→「わすれた」。「給食おいしかった?」→「うん」。
会話が続かない。何を聞いても一言で終わってしまう。「この子、大丈夫かな」と心配になったこと、ありませんか?
でも、もしかすると問題は子どもの側ではなく、「質問の仕方」にあるのかもしれません。
今日お話しするのは、「クローズドクエスチョン」と呼ばれる聞き方のこと。なんだか難しそうに聞こえますが、やっていることはとてもシンプルです。そして、使い方を知っていると、子どもとの会話も、勉強のサポートも、ぐっとやりやすくなります。
「答えやすい質問」と「答えにくい質問」がある
まず、2つの質問を比べてみてください。
A:「今日の授業で、どんなことを学んだ?」 B:「今日の算数、かけ算の勉強だった?」
Aの質問は自由に答えられる分、子どもにとっては「何を言えばいいんだろう」と考えることが多くなります。頭の中にある情報を整理して、言葉にまとめて、口に出す——これ、大人が思っている以上にエネルギーを使う作業なんです。
一方、Bの質問は「うん、かけ算だった」か「ううん、わり算だった」か、すぐに答えられます。
Aのように自由に答えられる聞き方を「オープンクエスチョン」、Bのように「はい」「いいえ」や短い言葉で答えられる聞き方を「クローズドクエスチョン」と呼びます。
どちらが良い・悪いという話ではありません。でも、この2つの使い分けを知っていると、子どもとのやりとりが驚くほどスムーズになることがあるんです。
子どもの頭の中で何が起きているか
ここで少し、子どもの立場になって考えてみましょう。
学校から帰ってきて疲れている。頭の中には、今日あった出来事がごちゃごちゃに詰まっている。そこに「今日どうだった?」と聞かれても、何をどこから話せばいいかわからない。
結果、「ふつう」「べつに」になる。
これは面倒くさがっているわけでも、話したくないわけでもないことが多いんです。情報が多すぎて、整理が追いつかないだけ。
そんなとき、クローズドクエスチョンが助けになります。
「今日、体育あった?」→「あった」 「走った?」→「リレーやった」 「勝った?」→「2位だった。悔しかった」
「はい・いいえ」で答えられる質問を小さく重ねていくうちに、子どもの頭の中が少しずつ整理されて、自分から話を広げ始めることがあります。
最初の扉を開けるのが、クローズドクエスチョンの役割です。
勉強の場面でも使える「小さな質問」
この聞き方は、勉強のサポートにも力を発揮します。
たとえば、算数の文章題でお子さんが手を止めてしまったとき。
❌「どこがわからないの?」
これ、聞いている側は親切なつもりですが、子どもにとっては「どこがわからないか」を説明すること自体が難しい。わからないから止まっているのに、「わからないところを説明しろ」と言われているようなものです。
こんなふうに聞き方を変えてみると、どうでしょう。
⭕「問題文は読めた?」→「うん」 ⭕「何を聞かれてるかはわかった?」→「……たぶん」 ⭕「式は立てられそう?」→「式がわからない」
ここまで来ると、「あ、この子は式の立て方でつまずいているんだな」とピンポイントでわかります。
大きな質問で行き詰まったら、小さな質問に分解する。これだけで、子どもの「わからない」が「ここがわからない」に変わり、大人も的確に手助けできるようになります。
「はい」「いいえ」の中にある、小さな達成感
もうひとつ、クローズドクエスチョンの隠れた効果があります。
それは、「答えられた」という成功体験が生まれやすいこと。
「日本の首都はどこ?」と聞かれて、「東京」と答えられた。 「リンゴは果物?」→「うん」。正解。
こうした小さな「合ってた!」の積み重ねは、子どもの中に「自分は答えられる」「自分は考えられる」という感覚を育てます。
特に、勉強に苦手意識を持っている子や、自分に自信がない子にとっては、この「答えられる質問」の存在がとても大きいんです。
いきなり「この問題を解いてごらん」と突き放すのではなく、「ここまでは合ってるよね?」「これは知ってる?」と、答えられるところから始めてあげる。足場を一段ずつ作ってあげるイメージです。
使いすぎると起きること——オープンクエスチョンとのバランス
ここまで読むと、「じゃあ全部クローズドクエスチョンにすればいいの?」と思われるかもしれません。
実は、そうとも限らないんです。
「はい」「いいえ」だけで答えられる質問ばかりだと、子どもは「自分で考えて言葉にする」練習ができなくなります。
たとえば、こんな会話を想像してみてください。
「楽しかった?」→「うん」 「友だちと遊んだ?」→「うん」 「ケンカしなかった?」→「うん」
これでは、まるで取り調べです。子どもは自分の気持ちを自分の言葉で話す機会がないまま、「うん」「ううん」だけで会話が終わってしまいます。
大切なのは、入り口はクローズドクエスチョンで開いて、少しずつオープンクエスチョンに広げていくという流れです。
「今日、体育あった?」→「あった」(クローズド) 「何やったの?」→「ドッジボール」(少しオープン) 「どうだった?」→「最後まで残れたんだよ!」(オープン)
最初の質問で答えやすい入り口を作り、子どもが話し始めたら、だんだん自由に話せる質問に切り替えていく。このグラデーションが、いちばん会話が弾むパターンです。
日常のあちこちに、使えるチャンスがある
クローズドクエスチョンは、勉強の場面だけでなく、毎日の暮らしの中にたくさん使えるチャンスがあります。
朝の支度で
「歯みがきした?」「ハンカチ持った?」「今日の時間割、確認した?」
朝のバタバタした時間に長々と会話する余裕はなくても、こうした短い質問なら自然に入ります。子どもも「うん、やった」と答えることで、自分で確認する習慣がつきやすくなります。
食事の時間に
「今日のごはん、おいしい?」→「うん」→「どれがいちばん好き?」
ここでも、最初の一問は答えやすいものにして、そこから広げるパターンが使えます。
寝る前の5分で
「今日、楽しいこと何かあった?」と聞くと「べつに」で終わることがあっても、「今日、笑ったことあった?」と聞くと「あった」と返ってきて、そこから話が始まることがあります。
質問を少しだけ具体的にする。それだけで、子どもの言葉が出やすくなるんです。
「聞き方」を変えると、「聞こえてくる音」が変わる
同じ子どもでも、聞き方ひとつで返ってくる言葉がまったく違うことがあります。
「答えやすい質問」をひとつ投げかけるだけで、黙っていた子が口を開く。手が止まっていた子が鉛筆を動かし始める。「わからない」と言っていた子が「ここまではわかる」と言えるようになる。
特別な道具も教材もいりません。必要なのは、「大きな質問を、小さく分けてあげる」というちょっとした工夫だけ。
今日の帰り道、夕食の時間、宿題を見ているとき。お子さんにひとつ、「はい」か「いいえ」で答えられる質問を投げかけてみてください。
その小さな一問が、思いがけない会話の入り口になるかもしれません。
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