毎晩のように「宿題やったの?」「いつやるの?」「早くしなさい!」と声を張り上げて、ふと気づく。――あれ、自分は今日何回「勉強」って言っただろう。
ため息をつきながらスマホで検索窓に打ち込む言葉は、「子ども 勉強 やる気 出ない」。あるいは「勉強しなさい 言いたくない」。
もし今そんな気持ちでこの記事にたどり着いたのだとしたら、ちょっとだけ安心してください。同じキーワードで検索している親御さんは、全国に驚くほどたくさんいます。
そしてもうひとつ。「勉強しなさい!」を繰り返しても子どものやる気が出ないのは、お子さんのせいでも、あなたの育て方のせいでもありません。「やる気の引き出し方」にはコツがあって、それを知っているかいないかの違いだけなんです。
今回は、子どもが「やらされ感」から抜け出して自分から動き出すための、3つの”きっかけ”のつくり方をお伝えしていきます。
なぜ「勉強しなさい」は逆効果になりやすいのか
本題に入る前に、ひとつ問いかけてみますね。
あなた自身が子どもの頃、「勉強しなさい」と言われてやる気が湧いたこと、ありましたか?
……おそらく、多くの方が「ない」と答えるのではないでしょうか。
実はこれ、大人も子どもも同じです。人は「やれ」と言われたとたん、やりたくなくなる生き物なんです。心理学では「心理的リアクタンス」と呼ばれますが、小難しい名前はさておき、「やれと言われるとやりたくなくなる現象」、誰でも心当たりがありますよね。
さらに、従来の勉強のやり方には、子どものやる気を静かに削ってしまう”落とし穴”がいくつかあります。
- テストの点数や偏差値が目標のすべてになっている
- 「何のためにやるのか」がわからないまま、ただ問題を解いている
- 親や塾が立てたスケジュール通りにこなすだけで、自分で選ぶ余地がない
こうした環境では、勉強は「やらされるもの」「終わらせるもの」にしかなりません。食事にたとえるなら、メニューも量も席も全部誰かに決められた食事を、黙々と食べ続けるような感覚に近い。それではお腹はふくれても、「おいしい!」とは感じにくいですよね。
では、どうすれば子どもの中に「やってみたい」という気持ちが芽生えるのか。ここから3つのきっかけを順に見ていきます。
きっかけ① 「これ、何の役に立つの?」に答えをくれる体験
小学4年生の男の子の話です。算数の「割合」がどうしても嫌いで、宿題のたびに固まっていました。お母さんも教え方がわからず困っていたある日、一緒にスーパーに買い物に行ったときのこと。
「このお肉、30%引きだって。もとの値段が500円だったら、いくらになるかな?」
男の子はしばらく考えて、「350円?」と答えました。「正解! すごいじゃん、割合できてるよ」と返したら、本人が驚いた顔をして「え、これ算数なの?」。
その日から、スーパーに行くたびに値引きシールを見ると自分から計算するようになったそうです。
この男の子の中で何が起きたかというと、「勉強が自分の生活とつながった」瞬間があったんですね。
教科書の中だけの話だったものが、目の前の値札と結びついた。「だから割合を勉強するんだ」と、頭ではなく体で納得できた。こうなると、勉強の意味がまるで変わってきます。
家庭でこのきっかけをつくるのは、実はそれほど難しくありません。
- 料理を一緒にしながら「200mlって、このカップ何杯分だと思う?」と聞いてみる
- 旅行先で「この城、誰が建てたか知ってる?」と歴史につなげてみる
- ニュースを見ながら「この国ってどこにあるんだろう?」と地図を開いてみる
ポイントは、「教えよう」とするのではなく、「一緒に面白がる」こと。「お母さんも知らなかった!」というリアクションが加わると、子どもの目はもっと輝きます。
きっかけ② 「自分で決めた」という感覚
こんな場面を想像してみてください。
パターンA:「今日は国語の漢字ドリルを3ページやりなさい」 パターンB:「今日やることは漢字ドリルと計算プリントがあるけど、どっちから先にやる?」
内容はほぼ同じなのに、パターンBのほうが子どもは動きやすくなります。理由はシンプルで、「自分で選んだ」という感覚があるからです。
人は「自分で決めたこと」には前向きに取り組める。これは大人にも当てはまりますよね。上司に「この仕事やれ」と言われるのと、「AとBどっちを担当したい?」と聞かれるのとでは、気持ちの乗り方がまったく違うはずです。
家庭での実践は、こんなふうにできます。
- 「今日は何時から勉強する?」と時間を子どもに決めてもらう
- 「このドリルとあのドリル、どっちが好き?」と教材選びに参加してもらう
- 「今週の目標、自分で決めてみない?」と一週間の計画を子どもに任せてみる
もちろん、子どもが立てた計画が親の目から見て「うーん……」と思える内容になることもあるかもしれません。でも、ここはぐっとこらえるところです。計画どおりにいかなかったとしても、「次はどうする?」と一緒に振り返ればいいだけ。「自分で決めて、やってみて、修正する」この一連の流れそのものが、大きな学びになっています。
きっかけ③ 「できた!」の手ごたえを小さく何度も味わう
ここでひとつ、クイズです。
「毎日コツコツ30分勉強して、月末のテストで10点上がった子」と、「毎日コツコツ30分勉強しているけど、テストまで手ごたえを感じられなかった子」。どちらが翌月も続けられると思いますか?
答えは明らかですよね。人は「やった分だけ手ごたえがある」と感じられたとき、次もがんばりたくなるものです。逆に、どれだけ努力しても実感がなければ、心が折れるのは当然です。
ここで大切なのが、目標をうんと小さく刻むということ。
「期末テストで80点」はゴールとしては立派ですが、日々の勉強のなかでは遠すぎて手ごたえを感じにくい。それよりも、
- 「今日は漢字を5つ覚える」
- 「この計算プリントを10分以内に終わらせる」
- 「教科書のこのページを音読する」
といった「今日できたかどうかがすぐわかる」サイズの目標にすると、毎日「できた!」を味わえます。
実践のアイデアとしてはこんな方法があります。
- カレンダーに勉強した日はシールを貼る。一列並ぶと達成感がある
- 「昨日は5問中3問正解だったけど、今日は4問正解だったね!」と”昨日の自分”と比べる
- テストの点数だけでなく、「先週わからなかった問題が今週は解けたね」とプロセスを一緒に確認する
子どもが「できた!」と言ったとき、「がんばったね」の一言はもちろん嬉しいのですが、もう少し踏み込んで「昨日より2問多く解けてるね」「この漢字、3日前は書けなかったのにもう覚えたんだ」と具体的に伝えると、子どもの表情がぱっと明るくなります。
3つのきっかけは「順番」も大事
最後に、この3つのきっかけの関係を整理しておきますね。
- まず「何のためにやるのか」が腑に落ちる(意味がわかる)
- 次に「自分で決めてやっている」という感覚が生まれる(納得して動ける)
- そして「やったらできた!」の手ごたえが返ってくる(もっとやりたくなる)
この3つがそろうと、歯車がかみ合うように子どもの中で「学びのサイクル」が回り始めます。
ただ、3つ全部を一度に完璧にやろうとしなくて大丈夫です。今日はスーパーで一つだけ算数の話をしてみる。明日は「どっちからやる?」と聞いてみる。週末は「今週がんばった自分にシールを貼ろうか」と声をかけてみる。それくらいのペースで十分です。
「勉強しなさい!」の代わりに、小さな問いかけをひとつ。それだけで、お子さんの目の色が少しずつ変わっていく日がきっと来ます。あなたとお子さんのペースで、ゆっくり試してみてくださいね。
キッズ学習アドバイザーでは、子どもの発達や学習支援に関するブラッシュアップした情報をnoteでも多数発信しています。ぜひ、ご覧ください!

