「靴をそろえてね」と言ったのに、玄関には脱ぎ散らかされたスニーカー。「ごはんだよ」と呼んでも、テレビに釘づけで返事すらない。思わず「もう何回言ったと思ってるの!」と声が大きくなって、あとから自己嫌悪……。
こんな毎日にちょっと疲れているとしたら、あなただけではありません。子育て中の親御さんの多くが「うちの子、人の話を聞けないんです」という同じ悩みを抱えています。
でも、ここでひとつ考えてみてください。
「話を聞かない原因」は、子どもの側だけにあるのでしょうか?
実はこの問い、答え合わせをしていくと「伝える側のちょっとした工夫」で状況がガラッと変わることが見えてきます。今回は、子どもが話を聞けない理由を年齢ごとにひもときながら、今日の夕方からすぐ使える声かけのコツをお伝えしていきますね。
「聞いていない」のではなく「聞けない」のかもしれない
まず知っておきたいのは、子どもの脳はまだ発達の途中だということ。大人にとっては簡単な「人の話を聞いて、内容を理解して、行動に移す」というステップも、子どもにとってはなかなかの大仕事なんです。
年齢ごとに見ていくと、こういう背景があります。
2〜6歳ごろ(幼児期)
この時期の子どもの集中力は、年齢×1〜2分程度と言われています。3歳なら3〜6分。つまり、大人が思う「ちょっとした話」でも、子どもにとっては長すぎることがあるんですね。
しかも目に映るもの、聞こえる音、手で触れるものすべてに興味が飛んでいく時期です。お母さんの話の途中で窓の外の鳥に目を奪われるのは、わがままではなく、脳が「あっちも気になる!」とフル回転している証拠です。
6〜9歳ごろ(小学校低学年)
学校生活が始まり、「先生の話を聞く」「友だちと順番を守る」など、聞く力が求められる場面がぐっと増えます。でもまだ、長い説明や抽象的な言い回しを頭の中で整理するのは難しい年齢。「ちゃんとしなさい」と言われても、「”ちゃんと”って何をすればいいの?」となっていることは珍しくありません。
9〜12歳ごろ(小学校高学年)
自分の考えや気持ちが育ってくる時期です。大人から一方的に「〜しなさい」と言われると、内容そのものよりも「命令された」という気持ちのほうが先に立って、素直に受け取れなくなることがあります。いわゆる「反抗期の入り口」ですね。
実は、大人の伝え方にも「落とし穴」がある
ここからが、先ほどの問いの答え合わせです。
子どもが話を聞かない場面を振り返ると、大人の側にも「聞きにくい伝え方」をしてしまっているケースが意外と多いんです。たとえばこんなパターン、心当たりはないでしょうか。
- キッチンから大声で「片づけなさーい!」と叫んでいる(子どもの近くに行っていない)
- 「何度言ったらわかるの、靴もそろえてないし、ランドセルも出しっぱなしだし、プリントも……」と一度にあれもこれも言う
- スマホを見ながら、子どもの目を見ずに話している
どれもつい日常でやりがちなことですよね。でも、子どもの立場で想像してみると、「遠くから聞こえる声」「情報が多すぎて何から手をつけていいかわからない」「自分のほうを見てくれていない」という状況になっていて、これでは大人同士の会話でも聞く気がなくなりそうです。
今日からできる!子どもに「届く」声かけ5つのコツ
では、どうすれば言葉が子どもの耳と心にちゃんと届くのか。特別なトレーニングはいりません。ふだんの声かけをほんの少し変えるだけで、驚くほど反応が変わることがあります。
コツ① 近くに行って、目の高さを合わせる
部屋の向こうから声だけ飛ばすのと、子どものそばにしゃがんで目を合わせてから話すのとでは、伝わり方がまったく違います。
あるお母さんが「しゃがんで目を見て話すようにしたら、それだけで”一発で動く率”が3割くらい上がった気がする」と笑っていました。大げさに聞こえるかもしれませんが、「自分に向けて話してくれている」と子どもが感じるかどうかは、言葉の中身以上に大きいんです。
コツ② 「ひと言だけ」に絞る
「靴をそろえて、手を洗って、宿題出して」と3つ並べると、最初のひとつは記憶から消えてしまうことがよくあります。特に幼児期〜低学年は、「伝えることはひと言、ひとつずつ」がちょうどいいバランスです。
「靴そろえてね」→できたら「ありがとう!じゃあ次は手を洗おうか」。この”一個ずつリレー方式”にすると、子どもも「できた!」を味わいやすくなります。
コツ③ 「ダメ」の代わりに「してほしいこと」を伝える
「走らないで!」と言われた子どもの頭には、まず「走る」というイメージが浮かびます。否定形は脳が処理しにくいんですね。
代わりに「歩こうね」と伝えると、子どもの頭には「歩く自分」が浮かびます。食事中に立ち歩く子には「お尻をイスにぺったんしようね」。これだけで、伝わり方がぐんと変わります。
コツ④ 子どもの気持ちをまず「言葉にしてあげる」
たとえば、ゲームをやめられない子に「いい加減にしなさい!」と言うと、バトルの始まりですよね。
ここでワンクッション。「あー、今すごくいいところなんだね」と、まず子どもの気持ちを声に出してあげます。すると子どもは「わかってもらえた」と感じて、そのあとの言葉がすっと入りやすくなります。
「いいところなんだね。でもご飯の時間だから、あと1回やったら終わりにしよう」。こんなふうに「共感」→「お願い」の順番にするだけで、親子のやりとりはずいぶん穏やかになります。
コツ⑤ 聞けたときに「ありがとう」を伝える
靴をそろえてくれた、呼んだらすぐ来てくれた。そんな「できた瞬間」を見逃さずに「聞いてくれてありがとう、助かったよ」と伝えてみてください。
子どもの中に「話を聞いて動いたら、お母さんが嬉しそうだった」という記憶が残ります。叱られて渋々やるのと、感謝されて自分からやるのとでは、次の行動がまるで違ってきますよね。
年齢別・声かけの具体例
頭ではわかっても、とっさに言葉が出てこない……ということもあると思うので、場面ごとの声かけ例を並べてみます。
幼児期
- 片づけ → 「おもちゃをおうちに帰してあげようか」
- 食事 → 「スプーンでお口に届くかな?やってみよう」
小学校低学年
- ゲームの切り上げ → 「長い針が6のところに来たら終わりにしよう。あと何分かな?」
- 宿題 → 「漢字ドリル終わったら、おやつにしようか」
小学校高学年
- 就寝時間 → 「明日の朝練、何時だっけ?逆算すると何時に寝ると楽かな」
- 困りごと → 「なんか気になってることある?あったら聞くよ」
ポイントは、年齢が上がるにつれて「指示」から「一緒に考える問いかけ」へシフトしていくことです。高学年の子に「早く寝なさい」と言うより、「何時に寝ると明日ラクかな?」と考えさせるほうが、自分で決めた感覚が生まれて動きやすくなります。
「聞ける子」は一日にしてならず
ここまで読んで「よし全部やるぞ!」と気合を入れなくても大丈夫です。5つのコツのうち、「これならできそうかも」と思ったものをひとつだけ、今日の夕方に試してみてください。
子どもの「聞く力」は、日々のやりとりの中で少しずつ育っていくものです。昨日よりほんの少しだけ伝え方を変えてみる。それを続けていくうちに、「あれ、最近スムーズだな」と感じる瞬間がやってきます。
そして何より、声かけを工夫することで親自身の気持ちもラクになります。怒鳴る回数が減って、「ありがとう」を言い合える場面が増えたら、それだけで夕方の空気がずいぶん変わるはずです。
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