「うちの子、英語も話せないし、人前に出るのも苦手で……将来、グローバルに活躍するなんて無理じゃないかって、正直不安なんです」
先日の面談で、あるお母さんからこう相談されました。実はこのセリフ、これまで教育の現場で数えきれないほど聞いてきた言葉です。そしてそのたびに、私はいつも同じことを伝えています。
「英語が話せる子」と「世界で通用する子」は、実はまったく別物なんです、と。
驚かれる方も多いのですが、これは決して慰めの言葉ではありません。実際に世界中の教育現場を見渡すと、評価されているのは語学力そのものではなく、もっと別のところにある力だったりします。今日はその正体を、できるだけかみ砕いてお話ししてみようと思います。
そもそも「世界で通用する力」って、何なのでしょう?
国際的な学力調査を見ていくと、面白いことに気づきます。読み書きや計算といった基礎学力はもちろん大切にされているのですが、それと同じくらい重視されているのが「知識をどう使うか」「初めて会った人とどう関わるか」「自分と違う意見をどう受け止めるか」という部分なんです。
つまり、知っていることの量ではなく、その知識を武器にして何ができるか。ここが世界基準のものさしになっているわけです。
「なるほど、でもそれって結局、頭のいい子の話でしょう?」
そう思われた方、実はそこが一番の誤解ポイントです。頭の良さと、この「使う力」は必ずしも一致しません。テストで90点を取り続ける子より、55点から70点まで自分の力で這い上がってきた子のほうが、この力を持っているケースは驚くほど多いんです。粘り強さや、うまくいかない時にどう立て直すか。そういう経験の積み重ねが、実は一番の土台になっています。
海外の教育現場では、正解のない問いに自分で仮説を立てて調べていく学び方や、仲間と一緒に一つのテーマを調査して発表する学び方が広がっています。日本の学校教育も、少しずつこの方向に変わり始めています。ただ、学校の変化を待っているだけでは、ちょっともったいない。家庭でできることは、実はたくさんあるんです。
家庭で育てられる5つの力
ここからは、実際に私が保護者の方々とやってきて「これは効果があった」と実感した具体的な関わり方を、5つに分けて紹介します。難しいことは何もありません。今日の夕食の時間から始められることばかりです。
1. 「なぜ?」を一緒に楽しむ
子どもが「なんで空は青いの?」と聞いてきたとき、正解をすぐに教えたくなりませんか。実はそこ、ぐっと我慢するのがポイントです。
「うーん、なんでだと思う?」 「もしかしたら、太陽の光の中に色が混ざってて、青が一番飛びやすいのかも」
こんなふうに、答えより先に「一緒に考える時間」をつくってみる。すると子どもは、正解を待つ姿勢から、自分で仮説を立てる姿勢へと少しずつ変わっていきます。この積み重ねが、実は思考力の一番の土台になっています。
2. 失敗を笑って受け止める
「発表会でセリフを飛ばしちゃった」「テストで思ったより点が取れなかった」。こんなとき、つい「次はがんばろうね」で終わらせてしまいがちですが、もう一言改善する余地があります。
「セリフ飛ばしても最後までやり切ったの、すごいことだよ」
挑戦したこと自体を認めてもらえた子は、次のチャレンジへのハードルがぐっと下がります。失敗を恐れる子と、失敗を経験の一つとして扱える子。この差は、10年後にとても大きな差になって現れます。失敗を恐れない心は、教えて身につくものではなく、こういう小さな会話の積み重ねで育っていくものなんです。
3. 違いを面白がる
海外の絵本を読んでみる。知らない国の音楽を流してみる。日本とは違う食文化のごはんを作ってみる。特別なことをしなくても、家の中に「自分と違うもの」を少しずつ持ち込むだけで十分です。
以前、ある家庭で「世界の朝ごはん」というテーマで一週間、いろんな国の朝食を再現してみた話を聞いたことがあります。お子さんが「え、フランスの子はパンだけなの?」と驚いていたそうですが、その驚きこそが、異文化への扉を開く一歩になっています。
4. 家族で意見を交わす
ニュースで見た出来事について、「これ、どう思う?」と聞いてみる。子どもの答えが的外れでも、否定せずに「なるほど、そう考えたんだね」とまず受け止める。
自分の意見を言葉にする経験と、それを誰かに受け止めてもらえる経験。この二つがセットになったとき、子どもは初めて「自分の考えには価値がある」と実感できます。逆に、意見を言うたびに訂正されてばかりだと、そのうち何も言わなくなってしまう。これは本当にもったいないことです。
5. デジタルツールを学びの相棒にする
タブレットやパソコンを、動画やゲームだけの道具にしておくのは正直もったいない話です。調べもの学習や、興味のあることを自分で検索して深めていく経験は、これからの時代には欠かせません。
同時に、ネットの情報がすべて正しいわけではないという感覚も、早いうちから一緒に育てておきたいところです。「このサイト、本当に正しいことを書いてるかな?」と一緒に確認する時間を持つだけで、子どもの中に情報を見極める力が少しずつ育っていきます。
保護者自身も、変わっていく必要があるのかもしれません
ここまで5つの力を紹介してきましたが、実は一番大切なポイントを最後に残していました。
それは、親自身のあり方です。
「知っている大人」として子どもに教える立場でいるのと、「一緒に学ぶ大人」として子どもの隣に立つのとでは、伝わるものがまったく違います。
子どもの「なぜ?」に、親が「知らないな、一緒に調べてみようか」と答える。その姿を見た子どもは、知らないことは恥ずかしいことじゃない、調べればいいんだと自然に学んでいきます。
これは決して、親も英語を勉強しろとか、専門的な知識を身につけろという話ではありません。ただ、変化を面白がる姿勢を、子どもの前で見せられるかどうか。それだけの話です。
子どもにとっての「世界で通用する力」とは、単なる学力の話ではありません。誰かと力を合わせて、自分らしさを発揮しながら生きていく力のことです。
その力を育てる種は、実は特別な教材にもお金にも頼らず、今日の夕飯の会話や、寝る前の5分間の中にすでに転がっています。
今日、子どもが「なんで?」と聞いてきたら、ちょっとだけ立ち止まって、一緒に考えてみませんか。その小さな一歩が、10年後、20年後の大きな飛躍につながっていくはずです。
質問に答えてAI分析する家庭向けレポート作成ツール、家庭完結型「お子さまのトリセツ」のnote記事
▶https://note.com/kidsla_jp/n/nb37f025bb952
文科省や各自治体の指標を基にした教員ツール「教員自己分析・内省カルテ:自分のためのリフレクションとキャリアデザイン」のnote記事 ▶https://note.com/kidsla_jp/n/ndf777e987983
学習指導要領の趣旨(主体的・対話的で深い学び等)を基にした教員ツール「授業デザインメーカー:学級の実態から授業構成・板書・評価を考える」のnote記事▶https://note.com/kidsla_jp/n/n4280716ee931
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