「うちの子、自分の意見をあまり言わないんです」
「気づくとすぐ、友達の真似をしてしまって」
こういう相談、よく受けます。実はこの二つ、根っこは同じところにあることが多いんです。カギになるのは、「自分に向き合う力」――自己理解です。
今の子どもたちは、SNSやテストの点数といった、外からの評価にさらされる機会がとても多くなっています。その分、「自分は今どう感じているんだろう」「なぜあの時ああ思ったんだろう」と、自分の内側と向き合う時間は、意識しないとどんどん削られていきます。
でも、この自分に向き合う力こそ、テストの点数では測れない大事な力――いわゆる非認知能力の土台になっています。感情をうまくコントロールできるようになる。人とのやり取りがスムーズになる。うまくいかないことがあっても立ち直れる。やる気が長続きするようになる。こうした力の根っこに、実は自己理解があるのです。
家庭でこそ育てやすい、3つのステップ
学校の集団生活の中では、なかなか一人ひとりの内面までは深掘りしきれません。でも家庭なら、一対一の会話の中で、自然にこの力を育てていくことができます。
ステップ1:気持ちに名前をつける
「今日はうれしかった?」「イライラすることあった?」。こんな問いかけを、日常の中に増やしてみてください。言葉にするのが難しければ、色や絵で表現してもかまいません。
気持ちに名前がつくと、子どもは自分の感情を少し離れたところから眺められるようになります。「今、自分はイライラしているんだ」と気づけること自体が、実は大きな一歩なんです。
ステップ2:一日を振り返る
「今日、一番楽しかったことは?」「ちょっとイヤだったことは?」。寝る前や夕食の時間に、こんな会話を挟んでみてください。
出来事と、その時の気持ちをセットで話すことで、「なぜあの時そう感じたんだろう」「自分ってこういうところがあるんだな」という発見が、少しずつ積み重なっていきます。
ステップ3:小さな目標を立てる
「今週、何かチャレンジしてみたいことある?」「どんなふうに頑張ってみたい?」。こういう前向きな問いかけは、子ども自身が「なぜそれをやるのか」という理由を、自分の中に持つきっかけになります。この感覚が、やらされる勉強から、自分で選ぶ挑戦への変化につながっていきます。
今日から試せる、家庭での工夫
大掛かりな仕組みは必要ありません。日々の暮らしの中で気軽にできることを、いくつか紹介します。
一言でいいので、その日の気持ちを書き残してみる。小さい子なら、絵やスタンプでも十分です。続けていくうちに、自分の気持ちを言葉にする感覚がだんだん身についてきます。
夕食後や寝る前に、「今日楽しかったこと」「今日頑張ったこと」を一つずつ話し合う時間を作ってみる。こうした振り返りは、自分でも気づいていなかった小さな成功を、あらためて意識するきっかけになります。
子どもが何か言ったり選んだりした時、否定せずに「なんでそう思ったの?」と聞いてみる。理由を一緒に考えることで、自分がどう考える傾向にあるのか、子ども自身が少しずつ気づいていきます。
「それはイヤだったよね」「悔しかったんだね」というふうに、ネガティブな気持ちにもまず共感してみてください。感情を否定されずに受け止めてもらえる経験があってこそ、子どもは安心して自分と向き合えるようになります。
自己理解が深まると、何が変わるのか
自分に向き合う力が育つと、いくつかの変化が見えてきます。
気持ちに振り回されにくくなり、自分を落ち着かせられるようになる。失敗やイヤなことがあっても、案外あっさり立ち直れるようになる。得意なところも苦手なところもまるごと受け止めて、「自分ってそんなに悪くないな」と思えるようになる。そして、「やらされる」から「自分でやる」へと、行動の理由が自分の中に生まれてくる。
こうした変化はどれも、テストの点数には表れません。でも、これから先の人生を、自分らしく歩いていくうえで、何よりも土台になる力だと私は思っています。
おわりに――教えるより、問いかける
知識だけでは、これからの時代を切り拓くには足りません。必要なのは、自分を知り、自分を活かす力です。
家庭でできることの基本は、教え込むことではなく、「問いかける、待つ、共感する」ことです。毎日のちょっとした会話や振り返りの積み重ねの中で、子どもは少しずつ「自分ってどんな人なんだろう」と考えられるようになっていきます。
今日の小さな一言が、10年後、20年後のその子の生きる力につながっていく。そう思うと、今日の声かけも、また少し違って見えてきませんか。
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